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隆二さん、私と話してて笑ったことないかも。
笑えるような話をしてない私が良くないのかもしれないけど………
「歩きで帰れるんでしょ?」
いつのまにか“そこ”に着いていた。
「はい、近いんで」
彼が通りから体を乗り出して遠くを見たから、私も同じようにして見てみた。
今現在、視界にタクシーはゼロ。
「タクシー、私が停めましょうか?」
「あ…………うん」
タクシー、暫く来なくて良いですよー。
「あのさ」
「はい?」
道路をじっと見ている私に、車止めに腰掛けた彼が後ろから話しかけた。
.
.
「俺のこと、好きなの?」
「はい……………えっ!?」
思いっきり振り向いた私のことは見ずに、彼はあごで“来たよ”と合図した。
一台、タクシーが走ってくる。
反射的に手を挙げたけど、私の頭は真っ白だった。
唐突に好きなの?と聞かれたからじゃなくて
“俺のこと好き?”じゃなくて“俺のこと好きなの?”って聞き方は……………
多分、私からの好意をよく思っていないから………だと思う。
目の前を人を乗せたタクシーが通り過ぎて行った。
空車、来てください。
「俺のこと勘違いしてるよ、多分」
私は相変わらず、背中で彼の声を聞いている。
「普段、近寄りにくいけど笑顔とギャップがあって、男らしくて…………とか思ってるでしょ」
私は挙げた手をおろすことが出来ないままでいる。
「そんなんじゃないからね」
気付いたら、キィ──っと一台タクシーが停まって私の目の前でドアを開けた。
私の横を通り過ぎた彼が、車に乗り込んで行き先を告げている
“この人は乗らないのかな?”そんな表情の運転手さんと目が合った。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月2日 19時