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触っちゃいけないのに、ついつい顎の赤い膨らみを指で撫でてしまう。
「マルチビタミン……ミネラル?」
付け焼き刃のサプリメントを買うために入ったコンビニ。
片っ端から飲んでやろうか。
少しずつ横歩きしながら、どれを買おうか悩んでいたらトンっと足が何かにぶつかった。
「あっ、すみません」
反射的に謝って隣を見たら、
「わざと蹴ったでしょ」
隆二さんが居た。
「こっ、こんなとこで何してるんですか?」
「事務所の隣のコンビニでよくそんなこと言えるね」
「そう………ですよね」
そう答えてから私はビタミンCとEの袋を手にしてレジへ向かった。
昨日のことを何か言われたらどうしようと思うと、段々と顔が下を向いてしまう。
顔馴染みの店員さんが会計をしながら「ニキビ?」と聞いてきた。
「ニキビって歳じゃないですよ……」
「そんなことないよ」
笑いながらレシートを渡して小さく手を振ってくれたけど、やっぱりこれは吹き出物だ。
コンビニを出たら、冷たい空気が頬を撫でる。
「寒っ」
そろそろ羽織もの…………って言うか何か……後ろに足音……。
誰か分かってる。さっき私と入れ替わるようにレジに並んだのが少し見えたから。
“利用しろとか言うな”
耳の奥に、まだ残ってる言葉。
チラッと後ろを振り返った。
「つけてるわけじゃないから」
面倒臭そうに隆二さんは言った。
「分かってます………あの、車?ですか?」
ちょっとだけ歩みを速めた彼が私の隣に並ぶ。
「昨日断ったくせに」
……その話しかぁ。
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作者名:ぽち。 | 作成日時:2015年10月2日 19時