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生きたいから抗う ページ26
「……あ」
誰よりも先に私の生理的な声が漏れた。その声はまるでこの世界を客観視している者のようで、自分で放った言葉に背筋が凍った。
偽物の爆弾だと判っていても、その無機質な音は冷汗がだらだらと流れていくほど恐ろしい。もしかしたら本当に爆発するんじゃないか。私は、此処で死ぬんじゃないかと錯覚する。
恐怖は余程決定的な確信が持てない限り、または太宰さんみたいな人達でない限りは消える事は無い。頭で全てを理解していても、心はその恐怖心を拒まないからだ。
「あああああああああ!」
敦君の悲鳴が耳に届いた。
それは空間をも引き裂いてしまうのではないかと錯覚するほどこちらの動きが止まってしまう。不安を加速させていく叫び声は出来れば今一番聞きたくなかった。
緊張が解けないままキョロキョロと辺りを見回すと、拘束が解けていないナオミちゃんがもがいていた。太宰さんと国木田さんは爆弾しか視界に映していない。あの距離だと爆弾が本物ならナオミちゃんは爆風に巻き込まれてしまう。
私は自分の顔色が変わるのを感じながらナオミちゃんに駆け寄った。
「ナオミちゃん!!」
喉をこれでもかと開けて叫んだ。ナオミちゃんは目を大きく見開いて溜まっていた涙を頬に流した。その怯えた表情がさっきまでは果奈にそっくりだったのに。……今はちょっと前の私そっくりで、他人事とは思えなくて。
ナオミちゃんの元へ来たときはもう爆弾の時間が迫っていて、本能的に守らなくてはと思ったから、ナオミちゃんの上に覆いかぶさった。特に頭を苦しくない程度に強く抱きしめる。
「莫迦!」
太宰さんの言葉は、敦君が爆弾へ覆いかぶさった時に言った言葉だ。
(良かった……原作が変わらなくて。)
無機質な爆弾のタイマー音は止まることを知らず、数秒の間ずっとオフィス十二響き渡っていた。その音が今
後トラウマになるんだろうなと思いながら私は強く目を閉じた。
入社試験の全貌 〜敦君の絶望を添えて〜→←美脚もいいけど私は鎖骨派
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作者名:赤菊 藍 | 作成日時:2017年9月19日 17時