今日:8 hit、昨日:2 hit、合計:71,853 hit
小｜中｜大
ネガティブ思考 ページ24
あれほど頭に叩き込んで擦り切れるほど読んだ漫画の台詞とアニメ、小説とは全く異なる台詞がちらほら聞こえてくる。
本当に成功するのだろうか。とか、失敗するかもしれない。とかネガティブな感情しか湧き出てこなくて、気持ちをリセットしてもリセットしてもきりがない。
遂に足がすくんでカタカタと震えだしてきた。我が体ながらなんて情けない。
「まあ、文ストファンに恥じぬように……頑張りますか」
そう意気込んで二ッと作り笑いを浮かべた。
何のためにナオミちゃんを助けるのか。根本的にはまだ決まっていないし、なんなら緊張でさっき何を考えていたのかなんてほとんど忘れてしまった。
でも、人を助けるってことは、理由なんて必要ないのかもしれない。
「『独歩吟客』」
刹那、国木田さんの声が聞こえてきた。
理想を追求すればするほど国木田さんは強くなれる。彼も何かの為に戦っているのだ。見えもしない明るい未来に縛られ過ぎている彼の姿はかっこよすぎて禿げる。
国木田さんの格好良さに悶えながらナオミちゃんの元へ一直線に走った。私が姿を現した瞬間より一秒ほどはやく国木田さんの鉄線銃が起爆装置のリモコンを奪い取った。すさまじい速さで谷崎君の起爆装置を取り上げた国木田さんは「後は任せたぞ」と言っているようで、実にイケメンだった。
谷崎君が動揺した時、私はナオミちゃんに手が届いた。服の柔らかい生地にべったりと着いた私の指は、少し強引にナオミちゃんを起こす。
恐怖によって揺れたナオミちゃんの瞳を見つめながら、私は強く言った。
「大丈夫。絶対死なせないから」
その言葉を口にするが早いか私はナオミちゃんを太宰さんの元へ突き飛ばした。綺麗な黒髪が逆さにした扇子の様にパッと開くのが判った。良かった。そう思って指先の力が抜ける。
しかし、安心したのも束の間だった。谷崎君が今の無防備な状態の私をそのままにしておくはずがない。私は今抵抗も何もできないのだから、絶好の人質候補と言える。男の子を具現化したような手が私のパーカーへさし伸ばされたかと思ったら、谷崎君が大きく前のめりになって手が空を切った。
「えっ」
間抜けにもびっくりしすぎて声をあげてしまった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：赤菊 藍 | 作成日時：2017年9月19日 17時
