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困ったときは人に聞け ページ3
数分前に路地裏に別れを告げた後、なんとか人が通る道に出る事が出来た。
ポケットに偶然入っていたスマホはほとんど正常に機能していたから、多分私が元居た世界とあまり環境が変わらないのかもしれない。そう思ったら肩の力が抜けた。
前いた環境と殆ど変わらないとなると元の世界へ帰るまで此処へ滞在する場合、生きていけなくはないだろう。最悪野宿で乗り切ってみせる。
たまたま通りかかったスタイルの良いお姉さんを見つけた。
明らかにキラキラオーラを放っている、明らかに私と住む次元が違い過ぎるお姉さんに一瞬言葉が詰まったが道を聞かねばと息を切らしながら近づく。
「あのー、すみません」
おずおずと言葉を発しながら薄笑いを浮かべる。不審者丸出しなのは判っているものの、真顔で尋ねられるよりはいいだろうと開き直る。
お姉さんの大きな目が私を映していて、吸い込まれそうな程純粋で深い栗色の目が揺れ動く。それをポーッと見惚れていると、お姉さんが口を開いた。
「どうかしましたか?」
思ったよりも丁寧な返事と、優しく温かい声色が私を安心させる。
私は落ち着かねばと一息ついて、目線をいろんな所へ向けた後に口をゆっくり開く。
「此処って、東京ですか?」
「え?」
秒速で返された返事は大きな疑問符がつけられていて、やっちまったと思うには十分すぎる材料だった。
今此処で恥をかいても、多分どうせきっともう出会う事は無いだろう。今だけ、今だけ、と唇をかんで耐える。
私とは違った、丁寧な手入れをされているであろうお姉さんの薄紅色のぷるっぷるな女子の象徴である唇を見つめると、前歯を出しながら笑みがつくられた。
「ここはヨコハマですよ……もしかして、迷っちゃいましたか?」
この返しは私もお姉さんもほとんど傷つかない。更に私のフォローまでしてくれている。パーフェクトすぎて知恵袋に乗せてあげたくなるほどだった。
神過ぎるお姉さんの返答に胸が熱くなってくる。
「……迷っちゃいました」
眉を下げて笑うと、お姉さんも私と同じようにくすっと笑った。何となく既視感のある笑顔を受け取る。
空が青かった。
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作者名:赤菊 藍 | 作成日時:2017年9月19日 17時