野宿回避 ページ15
「うふふ。実はもう決めてある」
太宰さんはそういうと、整った顔で笑うと敦君を指さした。
敦君は一点の汚れも無い顔を保ったままぐっすり眠っていて、朝まで起きなさそうだ。きっといい夢を見ているんだろうな。彼がこれからヨコハマの命運を握るなんて、殆どの人は夢にも思わないだろう。
最も、太宰さんは見越していたようだが。
「うちの社員にする」
「あっ歴史的瞬間」
思わず言葉が漏れた。
録音データに私の声が入ったのは残念だが、まあ記念という事にしておこう。
「はああァア!!?」
暫く間が空いてから国木田さんの絶叫がくるのだと身構えていても驚いてしまう。それほどまでに国木田さんの声量が半端ないのだ。
夜の街を切り裂く様に響く国木田さんの声が実は一番近所迷惑なのではないかと思いつつも、口には絶対に出さない。
「あ、すいません。私家ないんで敦君と同室でいいですよね」
手を挙げて国木田さんにそう告げた。
探偵社で安全なのは敦君しかいないと思っている。谷崎君はナオミちゃんと同室だからなんか申し訳ないし、優しい賢治君に関しては不服は無いんだけど寝返りで殺されそう。
だから鏡花ちゃんが来るまでだけでも。という願いを込めて太宰さんを見つめると、「面白いからオッケー」と言われた。
これで少なくとも今日は大丈夫だ。
明日からは段ボール生活になるかもしれないが。
睡眠と夢の中→←私の家が無いので誰かの家に泊めていただきたい
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作者名:赤菊 藍 | 作成日時:2017年9月19日 17時