04 家入硝子といふ女 ページ6
苦しそう?この僕が?夜の支配者である、吸血鬼の能力を引き継ぐ、この僕が?
「っあ、うぁ?」
嗚咽が漏れて、五条の坊から飛び降りて、逃げようとして、カーテンを開いた。
──外は、朝だった。
「っぎ、ああぁあ?」
僕の体が、燃えた。文字通り、燃えたのだ。
…っ朝だったのか!体内時間が作動してなくて夜だと思い込んでいた!
慌ててカーテンを閉め、顔に手を当てて回復に努める。
「ぐぁ、ぎ?」
痛い痛い痛い痛い焼ける焼ける焼ける!!
後ろには呪術師どもが居る!どうすれば、どうすれば!?
───手が無い。逃げられない。…殺される。
いやだ、いやだいやだいやだ!死にたくない死にたくない死にたくないしにたくない!
生きろって、言われたんだ!
最愛の姉さんから!
生きなきゃ、いきなきゃいきなきゃ!
ぱさりと黒い上着ですっぽり体を覆われた。
「っあ?だ、れぇ?」
女の呪術師だった。黒髪を耳に掛け、透き通るような黒い目で、心配そうに、苦しそうに僕を見ている。
「何故、僕をたすける…人間の女」
「…他人事じゃ無かったんだ、五条家は汚い手を使う事はここの皆が知ってる」
そっと頭を撫でた手は暖かくて、不覚にも姉さんと被って見えた。
「どうして…僕、酷いことたくさん言った!アイツの頸もしめた!なのに…!」
「君は子どもだ、まだ小さな子どもなんだ…それくらいは許されるよ」
ぽろぽろと涙がこぼれた。初めて、産まれて初めての人間からの優しさだった。ただただ、あたたかかった。
しゃっくりをあげながら抱き締めてくれる体温に縋り付くようにそのひとの服を掴んだ。
やさしく笑ってくれた。
世界が開けたようだった。
「僕、A」
名乗ってみると、嬉しそうに名前を教えてくれた。
家入硝子。彼女はそう言った。
ぼろぼろと、三日溜め込んでいたものが落ちていくようだった。
───暖かさを知った日。
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作者名:むえり | 作成日時:2020年12月21日 4時