6話 ページ8
kn side
あれから数十分泣いただろうか。
頭の中で、過去の出来事が思い出される。
それは、小学校低学年の夏の出来事だった______
________________________
「ねぇねぇ、今日何して遊ぶ？」
「んーそうだなぁ、鬼ごっことか？」
「いいね！しよう！」
僕には、幼なじみが1人いた。
元気で、活発で、今の僕とは似ても似つかないような人。
毎日の様に遊んでは馬鹿みたいに笑い合ってた。
幼稚園の頃からの付き合いだから、確か5年くらい遊んでいたのかな？
こんな日々が続くと思ってた。
なのに。
「とうき、僕ね、おひっこししなきゃいけないんだ」
「っ、え…？」
頭が真っ白になった。
引っ越し、という言葉が嫌いだと思ったのはこれが初めてだった。
「ど、どこに…？」
「わかんない…でも、もう会えないかも」
「そ、んな…！」
あまりにも辛かった。
あんなに仲良くしていたのに。
あんなに面白かったのに。
あんなに、彼といる時間が楽しかったのに。
もう、ダメなんだ。
数日後にお母さんから聞いた。
「あの子、中国に行ってしまったらしいわ」
「ちゅう、ごく…？」
まだ幼い僕には、中国が何かすら分からなかった。
でも、きっと多分、遠い場所なんだろうな。
…会えないんだろうな
あの日僕は、初めて泣いたんだ。
嬉し涙でもなく、悔し涙でもなく、
…ただただ、悲しくて。
一晩中泣いていたのを覚えている。
慰める彼の声も聞けなくて。
それから僕は、自分の居場所を失っていった。
僕の全ては、彼に支えて貰っていたんだな。
クラスでも浮いた存在になって、いじめも受けた。
古典的なものから、過激なものまで。
こうなったのは、なんでだろう。
______全部全部、彼が悪いんだ
「…！」
考えがぐしゃぐしゃになって、思いたくもないことさえが頭に浮かんでくる。
違う、違う…彼は悪くない…
でも、彼が居なくならなければ、こんなことにならなかったのかな。
腕の痣を見て、
『隠さなきゃいけない』
と、意味もない使命感に襲われた。
僕は、こういう存在で生きて行くべきなんだ。
もう考えがまとまらなくなって、髪をぐしゃぐしゃ掻き毟る。
毎日長袖を着て、黒マスクをつけて、前髪を目が隠れる程度伸ばした。
今の僕はここからできたんだ。
これで、少しは救われるだろう
SOSは心の奥底に押し込んだ。
微なる悲鳴と共に。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 80人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あおみどり(プロフ) - mimiさん» コメントありがとうございます！感想嬉しい限りです！！励みにして活動させていただきます…！ (2021年1月3日 23時) (
レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
mimi - 今更で申し訳ない(T-T)完結おめでとうございます！見始めた時は登輝くんの弱々しい、可愛い声を想像していたのですが、だんだん元気になってのちに、kntkさんの声にしか聞こえなくなりました（笑）凄く感動しました！ありがとう (2021年1月3日 22時) (レス) id: f51bfd6fbd (このIDを非表示/違反報告)
あおみどり(プロフ) - アイさん» コメントありがとうございます！ありがたい言葉嬉しい限りです〜！！番外編、絶対書こうと思ってるので、是非また見てください！ (2020年11月13日 23時) (レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - 完結おめでとうございます！！更新されるたびに飛んできてました(笑)shさんとknさんの距離が回を進めるごとにどんどん縮まっていって、尾も白かったです！更新お疲れ様でした！番外編…！可能ならば書いていただきたい！長文失礼しました。 (2020年11月13日 17時) (レス) id: d956bb37b9 (このIDを非表示/違反報告)
あおみどり(プロフ) - アイさん» コメントありがとうございます！今後もあおみどりの小説にお付き合いいただけると嬉しいです！更新頑張ります〜！ (2020年10月22日 20時) (レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あおみどり | 作成日時：2020年10月14日 7時
