2話 ページ4
sh side
「あ、あのー…?」
声をかけてみても、肩を叩いてみても、返事は返ってこない。
ど、どうしろと…??
「君の、名前は…?」
とりあえず名前を聞いてみると、細々と、小さく声が聞こえてきた。
「…ぁ……ぅ…」
全くもって聞き取れなかった。
「ん?もう一回言って?」
俺が更に聞くと、ようやく聞こえるような声で言ってくれた。
「…かねしろ、とうき、です…」
とうきくんか…
漢字は後から分かるとして、名前を知ったのは大きい。
「とうきくん、これからよろしくね」
と、俯いている彼を覗き込むようにして言う。
「…!」
前髪が長くて、あまり目が見えないけれど…
その間から、綺麗な青い眼がこちらをじっと見ていたのが分かった。
満天の星空を、そのまま瞳に閉じ込めたような、本当に美しい瞳が、俺の心を掴んで離さない。
「…ぁ、んま、り…見ないで、下さい…」
困惑したように言われて、慌てて立ち上がる。
「ああ、ごめんごめん…」
このまま会話が続きそうにないまま沈黙が続くのか、
そう思っていると、タイミングを見計ったかのようにチャイムが鳴った。
俺は自席に戻り、初めての高校生活を迎えようとしていた。
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kn side
「高校、楽しめるかな…」
校門の前で1人、桜を見つめる。
小学生の頃も、中学生の時も、決して楽しいと言えるような生活を送っていなかった。
むしろ、最悪。
こんな僕に、幸せなんてくるのかな。
あーダメダメ!
もっと前向きにならなくちゃ…
でも、やっぱり怖いし…
これからクラスメイトになるであろう人たちはもう仲良くなっているみたいだけれど、僕に話しかけてくる人は1人もいない。
…僕、本当にダメかもしれない。
僕の雰囲気がいけないのかな、と、トイレに駆け込み鏡を見る。
前髪は目を隠すように長く、黒いマスクをつけているせいか、顔全体が黒く、暗い雰囲気だ。
これを外せば…、
マスクに手をかける。
「…!」
その瞬間、なんとも言えない恐怖感が僕を襲った。
怖い、僕が僕でなくなりそうだ。
…いいんだ。
僕はこのままで。
何も変わろうとしなくたっていいんだ…きっと。
僕はいつも通り、不幸せな生活を送ればいいんだ。
自分にそう言い聞かせるように自分の席に戻り、ぼーっと窓を眺めていた。
その時、教室に駆け込んできた彼を見て、
彼なら、僕と話してくれるのかな、と淡い期待を浮かべた。
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あおみどり(プロフ) - mimiさん» コメントありがとうございます!感想嬉しい限りです!!励みにして活動させていただきます…! (2021年1月3日 23時) (レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
mimi - 今更で申し訳ない(T-T)完結おめでとうございます!見始めた時は登輝くんの弱々しい、可愛い声を想像していたのですが、だんだん元気になってのちに、kntkさんの声にしか聞こえなくなりました(笑)凄く感動しました!ありがとう (2021年1月3日 22時) (レス) id: f51bfd6fbd (このIDを非表示/違反報告)
あおみどり(プロフ) - アイさん» コメントありがとうございます!ありがたい言葉嬉しい限りです〜!!番外編、絶対書こうと思ってるので、是非また見てください! (2020年11月13日 23時) (レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - 完結おめでとうございます!!更新されるたびに飛んできてました(笑)shさんとknさんの距離が回を進めるごとにどんどん縮まっていって、尾も白かったです!更新お疲れ様でした!番外編…!可能ならば書いていただきたい!長文失礼しました。 (2020年11月13日 17時) (レス) id: d956bb37b9 (このIDを非表示/違反報告)
あおみどり(プロフ) - アイさん» コメントありがとうございます!今後もあおみどりの小説にお付き合いいただけると嬉しいです!更新頑張ります〜! (2020年10月22日 20時) (レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおみどり | 作成日時:2020年10月14日 7時