レンズ越しの景色【糸師凛】 (ページ22)

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部活見学ページ22

『失礼しました』

静かに職員室の扉を閉め、人気のあまりない廊下を1人歩く
放課後のこの時間は普通なら部活の時間
ただ、部活へと入ってない私にとっては、授業が終われば帰宅するだけなのである

靴箱へと歩を勧めていると、外へと繋がる渡り廊下が目に入る
ここを見ると、先日の部活着の糸師くんのことを思い出す

今頃糸師くんも部活してるのかな…

そう思った矢先である

今時分が想像していた見覚えのある背中が、自身のスパイクの紐を結んでいた

『ぁ…糸師くん……？』

私のそんなか細い声も、この場所ではよく聞こえたのだろう
無言でこちらを振り向く糸師くん
特に何を言うというわけでもない

『えっと…これから部活？？』

「あぁ…」

そんな短い返答

サッカー部…なんだよね
彼の姿をみると、いつもの制服姿とはまるで違う
それがとても様になっていて、少し自分の頬が赤くなるのがわかる

糸師くんがサッカーやるのか…

自分に好奇心が芽生える
彼が部活の様子を想像すると、気になって気になって仕方がない

『あのっ………もしよかったらっ、練習見に行ってもいい？？』

「あ"ぁ？？？」

明らかに嫌そうな顔
やはりでしゃばり過ぎてしまったのだろうか
そんな彼の様子に、地面を見つめる

『ご、ごめんなさいっ…。さすがに嫌だよね…。

せっかく最近少し仲良くなれた…から…、糸師くんのこと…もっと知りたいなって思って……』

こんな私がでしゃばり過ぎてしまったと感じ、尻すぼみになる言葉
彼からの痛いほどの視線

『えっと…ごめんね、引き止めちゃって。私、もう帰るからっ！部活、頑張ってね！』

糸師くんの練習姿は見られなかったけれど、自分から声をかけて、応援できた
それだけで満足

彼にそう言うと、来た道をまた戻りだす

でも欲を言うなら、やっぱり少しでも見てみたかったなぁ⸺

「…邪魔だけはすんな」

『…ぇ？』

ポツリと呟かれた言葉
振り返ると、糸師くんはグラウンドの方に向かい始めていた
わけがわからず、ただ立っていると今度は糸師くんがこちらを少し振り返る

「…早くしろ」

その言葉に嬉しくなり、自然と頬が緩む
どんどん歩いて行ってしまう糸師くんの後を、小走りでついていくのだった