ペット04 ページ5
会社での疲れと頭痛が取れないまま帰宅するとふわりと香るご飯の匂い。
「おかえりなさい」
そこには当然のように猫っ毛少年がキッチンに立っていた。
「あ、食材勝手に使っちゃいましたけどいいですよね」
A「いや、あの…それはいいんだけどね。
なんで君はまだここにいるのかな…？」
いないだろうと思って帰ってきたところにまだ昨日の彼がいたら驚くのは普通だろう。しかもご飯まで作って。
私の問に彼は、
「まぁまず一つ目に、諸事情で家には帰れないんですね、俺。だから帰る場所ありませんし」
(カプセルホテルでも何でも行けよ)
「二つ目に、財布を何処かで落としてしまって。キャッシュカードとか保険証とかも全部そこなんですよねー」
そういいながらお味噌汁をよそる彼。
彼が動く度に猫毛が揺れる。
本当に…猫みたい
A「それなら
私に飼われる？」
私の発言に手を止めて目を見開く彼。
「は？」
A「つまり。ペットとしてなら置いてあげてもいいわ。お金も私が全部出してあげる。その代わり言うことは聞いてもらうけどね」
試しに言ってみた言葉。
さすがにこれは引くでしょう。
「本当ですか？」
A「え？」
返ってきたのは予想外の反応。
絶対に断られると思っていたこと自身にとっては少し戸惑ってしまう。
「ご主人様とペットか…………
なかなか面白いですね…………………」
そう呟くと彼は私の目を見ながら
「ヨロシク。俺のご主人様」
少しだけ楽しそうに笑った。
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作者名：朱雀 | 作成日時：2015年12月11日 18時
