負けられない (万里) ページ5
至「A、ちょっとおいで」
至さんに手招きされて、素直に俺たちがいるソファに近づいてきたA。
至「ここ押してみて」
至さんはAにガチャを引かせたいらしく、言われるがままにAは至さんのスマホに人差し指でタッチした。
至「……！単発でSSR…？！」
万里「マジすか？」
至「A、至さんと結婚しない？」
「え？」
Aは何が起きたかわからないようで、至さんの言葉に戸惑っている。
万里「A、俺のも引いてみ」
「えっと、はい」
Aが俺のスマホに触れると、俺がいくら引いても出なかったSRが出てきた。
万里「マジかよ…A持ってんな」
「喜んでもらえたなら良かったです」
そう言って去ろうとするAの腕を掴んでソファに座らせる。
万里「せっかくだし、Aもゲームやらね？」
「ゲームはあんまり得意じゃないんですけど…」
万里「大丈夫大丈夫、教えてやるし。ほら」
スマホを横持ちにしてAに手渡す。
万里「ここ押してここで攻撃するだけ」
「えっと、こうですか？」
万里「お、上手いじゃん。じゃあ次、このキャラに向かってここ押してみ」
「はい」
至「って、こら万里。何攻撃してんだよ」
「え！至さんだったんですか？ごめんなさい…」
万里「今の俺じゃなくてAっすよ」
至「なんだAか。許す」
万里「ゲロ甘かよ」
いつもならクソ口悪くディスってくるくせに、Aには至さんもこの通りの態度だ。
面白えから、スマホを持つAの手に自分の手を重ねて、日頃の恨みを晴らすように至さんのキャラを攻撃した。
「え、万里さんちょっと…」
至「おい、万里がやってんだろ。くそ殺すぞ」
万里「いや操作してんの俺じゃないんで」
続けて攻撃してやろうとしたところで、Aが急に「あ、あの」と顔を上げた。
万里「ん？」
「近いです…」
そう言って目を逸らしたAの顔は真っ赤で。……いや、可愛すぎんだろ。
思わず固まって己と葛藤していると、
「はい没収。Aも没収」
手元のスマホが取り上げられ、至さんがAの肩を自分の方へ引き寄せて俺から離した。
「A、今度は俺が万里ブチのめすから見てな」
「…はっ、負けねぇっすよ」
ゲームもAも、俺が勝ってやるから見とけよ、至さん。
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作者名：iha | 作成日時：2020年1月22日 17時
