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「センラ」
「っわ!びっくりしたぁ」
背中に触れるとこっちがびっくりする位身体が跳ねて大きい声を出す彼に小さく笑う。
菜箸を持った彼は抱き締めることはしなかったけど、どうしたん?と頭を撫でてくれた。
「何にも。傍にいたかっただけ」
「、、、可愛いんやけど」
ちゅ、と可愛らしく短いキスはようやく私を満足させた。
「焦げちゃうよ」
「ぁあ〜!」
フライパンを指さすと慌てて菜箸を動かす彼の背中を見ていたら、なんだかソファに一人で戻りたくなくてそのまま背中に張り付くとまた身体は小さく跳ねた。
「、、、Aちゃん?」
「何?」
「戻らへんの?」
「出来るまでこうしてる」
いつも私がキッチンに立っていた時にしていたように彼のお腹に手を回すと危ないよと言う。
前までは私の台詞だったのに。
背中に抱きつくなんてしたことなかったから新鮮で広い背中に頬を寄せてくっつくとお腹に回された腕に彼の手が重なった。
「料理しにくい?」
「全然〜」
最初は慌てていた彼も今は片手だけを器用に動かしてご飯を作ってくれている。
たまに右手で規則的に菜箸を動かす動きがなんだか眠気を誘う。
何より広い背中は安心感をくれた。
(これはこれでいいかも)
甘えたくて彼の背中に体重を預けてもびくともしない。
段々と体重をかけて寄りかかる私に彼は笑って重なった手をぽん、ぽん、とリズム良く動かして余計眠気を誘う。
「Aちゃーん?」
「ん、、、?」
「ご飯出来たよ」
「んー」
眠い、と背中にぐりぐりとおでこを押し付けると笑った気がした。
「お風呂は明日でもええけど、ご飯は食べよなー?」
うーん。と返事にもならない声で返すとゆっくりと腕が解かれて離れていった背中が寂しい。
せっかくベスポジを見つけたのに。
「眠いなぁ。でも頑張ってご飯食べよ?」
「、、、うん」
小さい子供に話しかけるような彼の甘い声に素直に頷くしかない。
それを見てえらいえらい、と頭を撫でられて嬉しくなってしまう私は随分単純だなと思う。
「私も運ぶ」
「じゃあこれお願い」
何皿か作ってくれていたおかずは今日もどれも美味しそうだった。
最初はお粥しか受けつけなかった私のお腹も、今はもうすっかり治って量は食べれないものの何でも食べれるようになってきた。
「いただきます」
「はいどうぞー」
何度も箸を運ぶ私を見てほっとする彼の顔に、キスの回数が減っただけで拗ねてごめんねと心の中で謝りながら頑張って食べ尽くした。
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あーりん(プロフ) - 神楽さん» ありがとうございます( ; _ ; )元の甘々要素に戻したくてふんだんに取り入れていこうとしてます、、、w甘々になってるのか?と自問自答付きですがw (2019年9月21日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
神楽 - 甘々ですな...。最高ですな.........。(語彙力低下中) (2019年9月20日 16時) (レス) id: 007b538a5a (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 無為さん» コメントありがとうございます!離れてさせていた分これからは暫くは穏やかな2人をお送りできればなーと思っております!更新頑張ります! (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 珠菜さん» ありがとうございますー!長いだけのお話なのに一気読みありがとうございます、お疲れ様でした( ; _ ; )これからも楽しんで頂けるように頑張ります! (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ゆうさん» 楽しみにして頂けていて嬉しいです( ; _ ; )!ハラハラしてもらうのが目的だったのでゆう様にそう言って頂けて、伝わってるんだなと安心出来ました!w (2019年9月16日 2時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーりん | 作成日時:2019年8月28日 7時