妖たちと暮らす家６

258 ページ37

今日は何曜日なんだろう。
ここに来て何日経ったか外の景色すら見せて貰えない私はもうわからなくなってしまった。
高瀬さんは昨日から会社に出勤しているらしい。
私は？
会社に行かなければ同僚や先輩がおかしいと気付いてくれるはず。
でも、携帯は愚か連絡手段が無い。
必要最低限の距離しか歩けないようになっている足枷を高瀬さんが居ない間に取ろうと躍起になっていたら見つかってしまい、逃げるなんて許さないと腕に手錠を掛けられてしまった。

(痛い、、、)

何とか抜けるかもしれないと手首を何度も捻って手錠から抜こうとするけど擦り切れるばかりで何も変わらない。
細い傷が何本も付いて血が滲んでも、傷がどんどん大きくなっても次は上手くいくかもとそれを止められなかった。

あの人が居ない間はずっとこうやって逃げる事だけを考えた。

出された食事にはほぼ手を付けなかった。
何が入っているかわからないご飯を食べるなんて怖い。
たまに袋に入ったお菓子を渡されたからそれを食べた。
水も封の開けてないペットボトルを出された時だけ口にすると次からはそうして渡してくれるようになったらほぼ水だけでお腹を満たした。

数日で、よくこんなに痩せれるものだなと細くなった手首を見て思う。
だからいつか上手く抜けるんじゃないかと期待した。

(辛い、、、)

食べてないせいか力が出ない。
頭もぼーっとする。
眩暈がするし熱が出た時のように身体が怠い。

食事を取らない私に高瀬さんは無理に食べさせようと頑張っていたけど口を開くことは無かった。
それに苛ついて殴られる事にも慣れた。
感情をなるべく出さないようにする事にも。
あの人は自分の思い通りにならないと手が出るらしい。
私をお風呂に入れようとして抵抗した時も何度も叩かれ大人しくなるしかなかった。
消えない彼のキスマークに勝手に腹を立てて殴られた身体には痣が残ったまま。
一番酷く手を出される時は、彼の名前を口に出した時。

「まだそんな事言ってんのか！どんな洗脳されたんだ！」

やめてと言っても怒鳴り散らされて声は届かない。
振り落とされる拳が痛くて段々感覚が無くなっていく。

でも毎回殴られた後は泣きそうな顔で本当にごめん、愛してると私を抱き締めた。
高瀬さんは、私にいつも愛してると言う。
人形のようになった私を愛してるなんて。
愛してるって何？
愛されてるなんてこの人と一緒にいて思ったことは一度も無い。
随分身勝手な愛は私を苦しめる事しかしない。

259:センラside→←257

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す