妖たちと暮らす家６

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頭が真っ白になっていく感覚も怖くなかった。
意識を手放してしまえば楽になれたのに。
突然離された手に身体は思考とは裏腹に必死に酸素を取り入れようと息をしていた。

「ごめん、ごめんね。大丈夫？」

また優しくなった声にまだ生きてたのかとぼんやり思う。
背中を撫でる手がいつもと違う。
ゆっくり撫でてくれる少し冷たい大きな手じゃないと、私の気持ちを落ち着かせることは出来ない。

「Aちゃんが僕を怒らせるから」

(勝手に怒ったのはそっちなのに)

息の整わない私に次々と声は掛けられるけど答えられるわけがない。

「でも安心して。ここにあいつはもう居ないし、指一本触れさせない」

その痕も僕が消してあげるという言葉に、キスマークを見て怒ったのかとようやく理解した。

ずっと消えないで欲しい。
ブレスレットを奪われてしまった私にはもうこれしか残ってない。

「ずっと一緒にいようね」

(ずっと一緒に、、、？)

それは彼と約束した事。
私が一緒にいたいのは彼しかいない。
ここにずっと閉じ込められて生活するなんて、、、人思いに殺してくれればよかったのに。

「ちょっと頭冷やしてくるね」

ぼーっとしたままの私を見て高瀬さんは部屋を出ていった。
閉じられた扉の音に、すぐに涙は零れていく。

押し倒されて乗られた身体は重かった。
彼がいつもどれだけ加減してくれていたかがわかる。
少し無理矢理組み敷かれても、嫌だと身体を押せば直ぐに彼はごめんねと退いてくれた。
力任せに私を抱こうとした事なんてもちろん1度も無い。
自制の全く効かなかったあの頃さえ、私を傷付けないようにと必死に我慢してくれた。
彼じゃない人に触られることが、こんなに気持ち悪いなんて。

ひとしきり涙を流して瞳を開けると、ぐしゃぐしゃになった布団の隙間に輝きが見えた。

(よかった、、！)

それは千切られてしまったけど彼がくれたブレスレットで、どうやらこれの存在を高瀬さんは忘れてしまっていたらしい。
見つからないようにと枕カバーの中にそっと隠した。

これさえあれば乗り切れる気がした。
きっと彼は来てくれる。

(何も心配する事ないよ、大丈夫)

(センラがおるからね)

そう言ってくれた。
だから大丈夫。
絶対に帰れる。
これからあの人にどれだけ触られようと彼の私を優しく撫でる感触が消えることなんて無い。


(ずっと一緒におるにきまってるやん)

私が一生を共にする人は、彼しかいないから。

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