妖たちと暮らす家６

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「なんで付けてるの」

手首に掛けられた高瀬さんの手は彼が付けてくれたブレスレットに伸びた。

(これだけは、、、！)

「やめて！嫌！」

引きちぎる様に強められた指先を剥がそうにも力が強くて離れてくれない。
これを外されてしまったら、もう本当に会えない気がした。
やめて、触らないで。
これだけは、私から奪わないで。

「なんで！もう必要ないだろ！」

揉み合う様になっても声を荒らげた高瀬さんはブレスレットから手を離してくれない。
耳元で大きくなった声に驚いて一瞬力が抜けると突然手首は軽くなった。

「あ、、、」

「やーっと取れた」

抵抗も虚しく簡単に千切られてしまった細いチェーンはゆらゆらと高瀬さんの手に握られている。
何も付けていない自分の手首に虚無感が襲ってもう何も考えられない。

「返して、っ返して！」

手を伸ばしてブレスレットを掴もうにも簡単に避けられてしまって触ることすら出来ない。
それがないと、こんな部屋で正気を保つ事なんて出来ない。
似合ってると彼の口付けがされたブレスレットは、私が一生大事にすると心に誓った物なのに。
つけられた足枷のせいで足が重い。

「こんな物要らないだろ！」

「返して！」

それしか繰り返さない私に高瀬さんの顔付きが変わった。
それでも返してとしか言わない私にきっと苛つきはピークに達したんだと思う。

「っ？！」

「Aちゃんが悪いんだよ」

一瞬何をされたのか分からなかった。
突然倒れた自分の身体と頬の痛みに殴られたんだとやっと頭が追いついてくる。

(センラ...)

倒された身体を起こせない。
見えた自分の何も付けられていない手首を見て目の奥が熱くなる。

(笑って)

ブレスレットをくれた時の、柔らかい彼の声が頭の中で蘇った。
優しく両頬を包んで、キスしてくれたっけ。

あの時は幸せな温かさを感じたのに、口の中は微かに血の味がしてズキズキと頬は痛い。

「ごめんね？痛かったよね？」

頬を撫でる手が気持ち悪い。
触らないで。
帰りたい。
彼に会いたい。
何度殴られたっていい。
彼に会えば、今日の事は忘れられる。
怖いことなんて無かった事にする力を、彼は持ってるから。

「良い子にしないからだよ」

良い子ってなんだっけ？
ここではきっと、高瀬さんの言う事を素直に聞いたら良い子なのか。




眠れないと彼に我儘を言う夜、頭を撫でられながら素直に眠りに着こうとすると耳元でいつも声がした。

(良い子やね。おやすみ)

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