245:センラside ページ24
私たちより人間の何処がいいんだと迫る姐さん方を適当にあしらってやっと静かになったと一息ついていると去りかけた太夫に爪までお労しい姿になったと嫌味のように言われ、よく気が付いたもんやなと後ろ姿を見送りながら長い袖に隠れた爪を指でなぞる。
長すぎる爪は襲うに必要な身体の一部とも言えたのに、今はその面影すらない。
「そういやそうだな。あれ?なんで?」
「もしかしてAちゃんの為?」
茶化すようなうらたんと坂田の声に当たり前やろと返すと可笑しそうに笑った。
有り得ないほど短くなった爪を袖から出して眺めると、頭に浮かぶのは毎回爪が長くなってくる事に切ってくれるAちゃんの姿。
(センラの爪、伸びるの早いね?)
(自分で切れる?)
小さかった頃から、爪が伸びると丁寧に切ってくれていた。
もう自分で切れるでしょと言うAちゃんに甘えたくて、指を切りそうで嫌だとわがままを言って自分で切った事は一度もない。
身体が元に戻ると切りにくいからと胡座をかいた俺の膝の上に座って腕の中で小さくなって一生懸命指を切らないように必死に爪を切る可愛い横顔を思い出して頬は緩んだ。
「あ、センラさんニヤけてる〜」
「どうせAちゃんの事思い出しとったんやろ」
酔っ払っているのかにやにやと天月くんと志麻くんが顔を見合わせているのに言葉を返すのも面倒になってきた。
誰に何を言われようと、今の俺の生活はAちゃんの為にある。
何処にいても恋しくなってしまうんだから末期だと思うけどこうなっているのは止められないし仕方ない。
(一緒に寝たかったんやけどな)
おやすみとキスをすると安心した様に身体の力が抜けていくのが可愛い。
眠る姿を見れないとなんだか落ち着かない。
夜中に目を覚ましてしまった時は傍にいたいのに。
寂しくないように。
何時でも傍にいることが証明できるように。
朝目を覚ましてすぐと、眠る前最後に瞳に映すのは俺でいたい。
本当は行って欲しくないくせに、行ってきたらなんて言う。
Aちゃんが行かないでと言えばこいつらなんてどうでもいいから行かなかったのに。
甘やかし方が足りなかったなぁと思うけど、行く前に思いがけない行動をされて少し驚いた。
(可愛かったな)
行きたくないと零す俺に初めて付けてくれた痕を思い出すと首筋が熱くなった様な気がして、もうずっと消えなかったらいいのにと守るように首に手を這わせた。
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あーりん(プロフ) - めめさん» ありがとうございます!甘い二人が書きたい私としては早くこのシリアスを抜けたい所ですがしばしお付き合い下さい!笑 (2019年8月27日 21時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
めめ(プロフ) - 更新お疲れさまです(^^)いつも楽しみに待ってます!シリアス展開なのに先が気になってワクワクしていますw更新頑張ってください! (2019年8月27日 16時) (レス) id: 08075475cf (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - 怜莉さん» 楽しみに待って頂いているのがすごく嬉しいです!( ;__; )コメント頂けてとても励みになりますー!少しシリアスなお話が続きますがお付き合いよろしくお願いします! (2019年8月27日 15時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
怜莉(プロフ) - 更新ありがとうございます!いつも楽しみで、今か今かと待っていますw個人的になんで話数毎の評価ができないんだーーーーー!!!と嘆いていますwこの先の夢主ちゃんとセンラさんがどうなるか気になります!更新頑張って下さい!待ってます! (2019年8月27日 10時) (レス) id: 0408e10153 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ぷーさん» ありがとうございますー!これからもよろしくお願いします!あと、課題頑張って下さい!!w (2019年8月27日 1時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あーりん | 作成日時:2019年8月8日 4時