155 ページ21
耳元で囁かれた好きという言葉に正直ヤキモチを妬いて拗ねていた私は核心を突かれてどぎまぎしてしまった。
からかってごめんねとまた繋がれた手を強く握り返す。
(わざと言ってくれたのかな...)
いつも素直になれない私をからかったり意地悪なことを言うけど、その後に必ずごめんねと謝って私の気持ちを言いやすい雰囲気を作ってくれているのは最近になってようやく気付けた。
今も、沈んだ私が素直になれなくて彼の心配を無下にしてしまうような態度を取っていたのに怒るでもなく可愛くない私の返事に優しく嬉しいと笑ってくれた。
涼しい顔をして前を向く彼になんだか申し訳ない気持ちになってくる。
素直になるって難しいなと思っていると通常に動き始めた電車がやってきて、次に見た彼の顔は電車内の人の多さに顔を歪めていた。
「毎日こんなん乗ってるん?」
雪崩込む人に驚いた顔をして私を見下ろす。
「うーん。まぁ、多い時はこんな感じかな」
次に来た電車には乗れそうと彼に言うと後ろを振り向き並んでいる人の多さにまた驚いていた。
「大丈夫?」
「だい、じょうぶ」
いつまで経っても慣れないなぁと次々と寄せられる人の波に押し潰されそうになっていると彼に身体を引き寄せられる。
完全に満員になった車内。
いつもは潰されないように立っているのが精一杯だけど、上手く端に乗り込んで支えてくれている彼のおかげでいつもより楽に立っている事が出来た。
守るように押し潰されないよう支えてくれる彼をこんなに身長が高かったかなと見上げる。
守ってくれている腕に好きだなぁと急に甘えたくなって彼の胸元に顔を寄せて体重を預けると少し笑ったような気がした。
次の駅に着くと人が少し減って完全に彼の背中が壁になってくれたおかげで私は普通に立つ事が出来た。
背中に感じる扉はひんやりと冷たいのに、壁ドンのように彼の腕に囲われている自分の体制を思うと身体は熱い。
少し曲げられた腕に手をかけると、彼の視線は私に向けられた。
周りを見ても背中ばかりでこちらを見ている人はいない。
ねだるように目を合わせると理解してくれたらしい。
目を細めた彼に一瞬唇を重ねられると恥ずかしくなった私は彼の肩に顔を埋めた。
(こんなことするタイプじゃないと思ってたのに、、、)
彼といると自分が自分じゃなくなるみたいだ。
可愛いと小さく囁かれた吐息に身体はまた熱くなった。
820人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーりん(プロフ) - lonleyさん» コメントありがとうございます!やっと書き始める事ができたのでのんびりにはなると思いますが読んで頂けると嬉しいです★ (2019年7月11日 23時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - ふらわぁさん» 気味悪さを表現したかったので、最高の褒め言葉ですwありがとうございます!笑 (2019年7月11日 23時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
lonley - すごくおもしろかったです! 坂田くんver.気になって仕方ありません!! これからも頑張ってください! 応援してます! (2019年7月10日 21時) (レス) id: 39388112b7 (このIDを非表示/違反報告)
ふらわぁ(プロフ) - おかえりってところでゾクってしましたw (2019年7月10日 20時) (レス) id: c190ba3ed4 (このIDを非表示/違反報告)
あーりん(プロフ) - もえかさん» コメントありがとうございます!どちらも読んで頂けて嬉しいです( ;__; )今後もよろしくお願いします! (2019年7月7日 16時) (レス) id: 509e058229 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あーりん | 作成日時:2019年6月19日 6時