妖たちと暮らす家３

103 ページ17

(やっぱり体調悪いかも...)

パソコンに打ち込む動作が辛く感じる。
身体は重いし何よりぼーっとする。
朝、彼に言われた言葉が頭を反芻する。


「具合悪そうに見えるんやけど...。会社休まれへんの？」

「んー、寝起きだからかも。大丈夫」

「寝起きやからって感じはせーへんのやけどなぁ」

するりと前髪をかき上げるようにおでこに滑らされた彼の手。
しばらく置かれていた手はそのまま前髪を分けると彼のおでこがくっつけられて近いな、と焦る。
うーん、と唸る彼を見ていたら顔を離してやっぱり今日の私はおかしいと言う。

「熱は無いんやけどなぁ、、、いつもやったら慌てて離れてると思うねん」

「え？」

「こんな大人しく熱なんかくっついて測らせてもらわれへんはず」

大丈夫？ともう一度おでこに手を寄せられる。

(確かにそうかも...)

いつもの私なら彼の顔が長い時間近くにあると照れて可愛くないことを言ったり彼を突っぱねる行動をしてしまう。
近いなとは思ったけどぼーっとしてただけだった。

「大丈夫。行ってくるね」

「心配やなぁ、、、。しんどかったらすぐ言うて帰って来るんやで」

途中で倒れたりしないか心配だと見送りの最後まで眉を下げる彼の顔を思い出して、帰って甘えてしまいたくなる。

こっそり携帯を見ると彼から『大丈夫？心配』と数時間前にLINEが来ていた。

数日の間ですっかり携帯に慣れた彼のLINEは会社にいる間、私の心配をするLINEばかり。
ご飯は食べれたかとか、嫌なことはないかとか、疲れてないかとか、、、。
出勤前は行って欲しくない、さみしいとわがままを言うのに離れている間はさみしいとはたまにくるものの、頑張れと背中を押してくれるLINEばかりなのに優しさを感じる。

(頑張ろ...)

ゆっくりしたら残業になってしまう。
早く帰りたいと深呼吸をしてまた仕事に取り組んだ。


---------------------

昼休憩、食欲がなくてゼリーを買って食べながら彼の声が聞きたくて電話をかけてみた。

「大丈夫？しんどい？」

「いきなりだね。大丈夫だよ」

開口一番に慌てた声で言われたから笑ってしまった。

「心配やから仕方ないやんー。大丈夫なん？」

「んー、やっぱりちょっとぼーっとしてるかも。でも今日仕事沢山あるから」

頑張るねと言うと帰りに病院に言った方がいいと彼が言う。
早く帰れたらそうすると言うと早く帰れるようにしようと言い、電話を切るまで絶対無理しないでと何度も繰り返した。

104:風邪→←102

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す