妖たちと暮らす家【浦島坂田船】

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勢いよく玄関を開けるとリビングから漏れるテレビの音がする。

(いない...？)

慌ててヒールを脱いでリビングに向かうとこちらに飛び付いてくる小さい影。


「うわっ、、！ただいま」

良かった〜居てくれた〜！という安心感で飛び込んできた男の子をぎゅうう！と抱きしめる。

「う、、、、」

苦しそうな声に力を緩めて顔をのぞき込む。

「待っててくれたの、えらいね。ありがと」

片手は背中に、もう片方の手は頭を撫でながら言うと瞳が笑っているような気がした。

「テレビ見て待っててくれた？」

抱き上げてリビングに向かうと本当に大人しくソファにいてくれたようで朝に出ていった時と何も変わらない。

「ご飯作るから待っててくれる？」

ソファに座らせると待ってて、という言葉に嫌だ。というように首を振る。

(あれ？ちょっと通じてる？)

昨日は話しかけても何を言っているんですか...みたいな顔で不安そうにこちらを見ていたけど、今はどうやら待ってての意味が分かって嫌がってるらしい。

「もうどこも出かけないから」

ね？と言うと不貞腐れたようにこくん、と小さく頷いた。

その後着替えて料理を作っている間も話すことは出来なくても私の周りをうろうろとして可愛い。
とにかく可愛い。

寂しかった？と聞くとそれは意味がわかってないみたいで首を傾げていたけどそばを離れないってことはそういう事なんだろう。

「ひとくち食べる？」

昨日は全く食べなかったけど、作ったご飯をじーーーっと見られ続けているのも気まずくてスプーンに掬ったオムライスを口の前まで持ってていく。

「？」

意味が分かってないようで私の顔をじっと見てくる。

「あーん。だよ」

口を開いてあーん、とスプーンをもう一度口に持っていくと開いたのでオムライスを押し込む。

「おいしい？」

もぐもぐと一応口は私の真似か動かすから聞いてみると不思議そうな顔をしている。

(食べれるんだ)

おばけでも知らない家で緊張してたのかなー、なんて。

もう一口食べるかと口元に持っていくと首を振られたのでちょっとがっかりした。

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