妖たちと暮らす家【浦島坂田船】

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袖で拭ききれなかった涙を優しく指の甲で撫でるように拭ってくれる。


嗚咽のまま話せない。
落ち着こうと何度か深呼吸して最後に大きくふーー、と息を吐いて俯いていた顔を上げると私を緩く抱き締めたままの彼と目が合った。

不安そうな、見た事のない表情にやってしまったと申し訳ない気持ちになる。
困らせたかったわけじゃないのに。

何て言おう、と目を合わせたまま考えていると後ろの髪を優しく撫でられる。

大丈夫？と言っているような、眉を下げて首を傾げる彼にふと小さく笑いかける。

「ごめんね、会社で嫌な事があって泣いちゃった」

私が言った意味を理解したのかはわからない。
でも笑ったことに安心してくれたのか彼も小さく笑ってもう一度優しく抱き締めてくれた。

私もまた抱き締め返すと、大きくゆっくり背中を撫でてくれる。


もう大丈夫。



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夜ご飯を作り終わってお風呂から上がってきた彼にドライヤーを渡されるといつもの定位置に座る。

いつもはテレビの方を向いて座る彼が濡れた髪のままこちらを向いて私を見上げている。

「今日はこっち向きでするの？」

うん、と大人しくタオルドライされながら私の太ももに腕を組む。


前髪を乾かし、腕を伸ばして後ろ髪を乾かそうとすると私の顔を覗き込む彼と目が合う。


(近い...！)

じー、っと私の顔を見上げる彼はソファの下に座っているからか上目遣いで可愛い。
心配してくれてるんだろうか。
ずっと目を離してくれない。


「そんなに見られると照れるんだけど、、、」

どうしていいかわからなくて、ふふ、と照れ笑いが零れてしまう。

私が笑うと、彼もにこにこと笑った。
私の足の上で組んでいた手を緩く解いて、こてんと頭を乗せて目を閉じている。

ドライヤーを切って片手で乾いたか梳きながら確認していると、目を閉じたまま私の片方の手を手探りで探している。

自分から手を握りに行くと、目を閉じたまま嬉しそうに笑って握り返してくれた。


さらさらと指の間を抜ける髪から同じシャンプーの匂いがする。
唇を上げて私に大人しく撫でられている彼が可愛くて、頬を指でくすぐると楽しそうに笑った。

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