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気づくこと。8 ページ8

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銀時だった。久しぶりに見たその姿は、とてもやつれていて、二枚目だったその姿とは変わり果てていた。


昼からお酒を煽っているようで、その顔はほんのりと赤くなっていた。銀時はフラフラな足で近寄ると、私の腕を掴んだ。





「A...か?土方くん、俺ァ、Aに会いたいからって幻覚見ちまってらァ...」






ボロボロの銀時に耐えられず、私はお水を買って銀時に差し出した。





「銀時...愛してます」





涙を流しながら銀時にそう伝えた。私は座って涙を流しながらこっちを見ている銀時に軽くキスをして、足早に駅に入った。
土方さんは、ただ見ているだけだった。「元気でな」「...そちらこそ」土方さんと会話を交わすと、電車に乗り込んだ。





「Aっ!!!!」






銀時が走りながらホームに来た。その瞬間ドアが閉まった。ドラマのように銀時は走る。私は涙が止まらなかった。やがて、電車は銀時を置いて走り去る。





「...っ、酷いよっ、忘れ...られないっ...じゃん」





席に着く。私は泣きつかれて寝てしまった。「次は...尾張...尾張...お荷物のお忘れないようご注意ください」そんなアナウンスで起きる。





「...尾張」




栄えてはいるが、江戸までとはいかない尾張。ここで新しい生活を始めよう。何もかもを白紙にして。





「ここがあなたの部屋ね」





大家さんの話を聞き、お礼をする。尾張の人はとても暖かい人ばかりだった。





「しかし、江戸からはるばる尾張に来てくれるなんて...私は嬉しいよ。ほら、ここのやつらはみーんな江戸に向かうんだよ。若いのが来て嬉しいねぇ」





という大家さんも若かった。「大家さんも若いじゃないですか」と、私が聞くと、大家さんは恋しい顔をすると、こう言った。





「私はね...逃げてきたんだ。江戸から」




自分の境遇とぴったりで私の顔が固まる。大家さんは私を見ると、「アンタもそんなところだろ?涙の跡が残ってやがる」「男?」と私に聞いた。私は頷く。




「愛してるって言ってくれなくなったんです。それで、喧嘩して、そこから二年顔合わせてないです」





大家さんはなにも言わず黙って聞いた。「その荷物全部置いて、ついてきな、私の部屋で全部吐き出しちゃお」と、眉を下げて優しく笑った。







「っ、姉御ォォォォォ!!」






「誰が姉御だっ!」









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作者名: | 作成日時:2021年4月9日 16時

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