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あれからすっかり夜も更けて、辺りがより一層の静けさに満ちた頃。

考えることが多すぎたせいか(とこ)についてからなかなか寝付けずにいた私は、一人夜風にあたろうと屋敷の縁側へと足を運んでいた。

松やら楓やらの伸びた趣のある庭から吹き込んでくる、肌寒いくらいの夜風。それを見越して着込んできた薄手の羽織は、ひらひらと風になびいている。





『______誰ですか』



それからしばらくの間は一人で寂しく夜空を眺めていたのだが、不意にどこからか床が鈍く軋むような音が聞こえてきたことで我に返る。

かつての仕事柄、夜の物音には敏感だ。私は微かに感じる人の気配をもとに、薄暗い廊下へと視線を向けた。


すると、月明かりに照らされるようにして見えてきたのは夕時に見た困り眉のお面。



『あら、よくお会いしますね』



……鋼鐵塚さん、といっただろうか。彼はこちらを伺っているのか、縁側に座っている私から随分と離れた位置に立ち尽くしている。

親切から声をかけても反応は無く、ただ無言のまま。先程のような表情すら見えないので、彼が何を考えているのかを読み取るのは難しかった。



「お前……(いく)つだ」

『……え?』

(とし)は幾つかと聞いているんだ」



さっきまでうんともすんとも言わなかったのに、突然何を言い出すのかと思えば。

彼は恐る恐るとでもいうように私との距離を徐々に詰めながら、相変わらずぶっきらぼうな態度でそんなことを尋ねてくる。



『ええと、二十一ですが』

「……また俺を馬鹿にしているんじゃないだろうな」



じとっと、お面に描かれたギョロ目を向けながら不信そうに私の顔を覗き込んできた彼は、人差し指で私の頬を小突くようにして言う。

この人の中での私は、よっぽど信用ならない人間として記憶されているのだろう。別に他人からの評価なんてどうでもいいけれど、それはそれで不満だ。



『嘘じゃありませんよ……あなたとは、十と六つも年が離れています』



私はそんな少しの不満を晴らすため、彼の手首に触れながらお面の奥の赤みがかった瞳を覗くようにして言った。

拾壱→←玖



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設定タグ:鬼滅の刃 , 鋼鐵塚蛍   
作品ジャンル:恋愛
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雨と雫(プロフ) - あゝもう文才が神ですね!?更新頑張ってください!個人的に夢主ちゃん可愛いな (7月1日 19時) (レス) @page6 id: 312a1378ed (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2023年7月1日 16時

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