128話 ページ6
「河野さん……?」
そう。
その人物は、くのいち教室の五年生で、山内アキさんの親友である河野サクラさんその人なのであった。
さすがに、六年生たちもくのいち教室とはいえ同じ学園に通っている後輩を手荒には扱えないようだ。
「ごめんなさい……」
彼女はビクビク震えながら、消え入りそうな声で謝った。
操られて自分を傷つけた人間と、くのたまの中では操った張本人と同じ部類だと思われている人間の前だ。
そうなるのも頷ける。
『……私は前の天女と同じようなことはしません。六年生たちも今は正気に戻っています。だから、怖がらなくて大丈夫ですよ』
そうは言ってみるが、信じてもらえるはずがない。
ただただ、拷問に耐えているかのような表情で俯くだけだ。
「……サクラちゃん。天女に騙されてあんなことをしてしまったこと、申し訳ないと思っている。本当にごめんね」
善法寺さんがそう言うと、他の六年生も口々に謝りはじめた。
私は「あんなこと」というのがどんなことなのか詳しくは知らないが……どうやら、彼らは彼女たちにも謝っていなかったらしい。
善法寺さんは言葉を続ける。
「でも、ここにいるのはあのときの僕たちじゃない。君だって大切な後輩の一人だ。何もしないから、理由を話してくれないかい?」
「……理由を話しても、本当に何もしませんか?」
少し顔を上げ、不安そうに尋ねる彼女。
そんな彼女の問いに、食満さんが優しく答える。
「ああ。約束する」
「それなら……分かりました、話します。……私は、くノ一教室の後輩を守りたかったんです」
「……どういうことだ?」
「後輩を守ることとAを偵察することに何か関係があるのか?」
「……先輩方もご存知の通り、くのたま上級生は私とアキちゃんだけです。なのに、私はいつもいつもアキちゃんに守られてばっかり……だから、私も天女様の情報を集めて、くのたまを守りたかった」
彼女は一度息をついて、付け加えた。
「でも、結局失敗。見つかってアキちゃんに迷惑をかけるだけ。私、最近本当に自分がここにいていいのかなって思うんです」
彼女は守られながら、ここまで追い詰められていたのか。
泣きそうな表情の彼女が痛々しい。
『……そんなことないですよ』
「え……?」
『失敗したとしても、あなたはあなたなりに頑張った。その事実は変わりません。自信を持ってください』
こんな表情をされると、さすがに放っておけなかった。
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ハル - 凄く面白かったです!大変な時期だと思いますが、これからも応援してます‼︎ (3月22日 19時) (レス) id: 0fe5dcb2f7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し46937号(プロフ) - 初めまして!素敵な夢小説をありがとうございます!もしよければ忍術学園全員出動の段書いていただけませんか? (2月27日 22時) (レス) id: f091a3aa7a (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - はじめまして。天女になった蝶柱第1章から見てます。リクエストなんですけどヒロインちゃんと1年は組がお茶会を開きそれに1年い組とろ組とそれぞれのクラスの先生が参加するが見たいです。 (2023年3月6日 18時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - 蘭檸さん» ありがとうございます!亀更新ですが、これからも少しずつ書いていくのでぜひ読んでくださると嬉しいです! (2023年1月14日 18時) (レス) id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
蘭檸(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2023年1月2日 16時) (レス) @page16 id: 9728c679fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麗羅 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aji391/
作成日時:2022年4月25日 22時