138話 ページ17
とにかく、この気まずい雰囲気をなんとかできないものか……と考えていると、向こうから尾浜さんが凄い勢いで走ってきた。
「Aちゃん!」
彼は私たちにぶつかるギリギリで止まり、私の名前を叫ぶ。
「どこに行ってたの?心配したんだよ!」
眉を下げたその表情からは、本当に心配していたのが伝わってくる。
『えっと……フラフラ歩いていたら、落とし穴に落ちまして……』
「ええ!?大丈夫?怪我とかない?」
「落ち着け、勘右衛門」
いつもより明らかに取り乱している尾浜さんを久々知さんが宥める。
『大丈夫ですよ。ちゃんと怪我しないように落ちましたから』
そう言うと、尾浜さんは大きく息を吐き、「よかった……」と呟いた。
『あの……かなりご心配をおかけしたようで……ごめんなさい』
「……謝らないで。Aちゃんは何も悪くないよ」
尾浜さんのその言葉に緊張が解けたのか、熱い雫が頬を濡らした。
「……A?」
「どうしたの?泣いてるの?」
私がいきなり黙ったのを疑問に思ったのか2人が声をかけてくるが、次々と涙が溢れてきて答えられない。
それが分かったのか、2人は長屋に着くまで無言で寄り添ってくれた。
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長屋に戻って狼煙をあげ、他の人たちがくるのを縁側に腰掛けて待つ。
時間とともに少しずつ涙が止まり、やっとまともに話せる状態になった。
「……落ち着いた?」
『はい。……お恥ずかしいところをお見せしました』
「……Aさえよければだけど、理由を聞いてもいい?」
そう尋ねられ、しばらく考えてから言葉を紡ぐ。
『……安心したんです。この世界でも私を受け入れてくれる人がちゃんといるんだなって。私は、心の奥底で自分が拒絶されることを怖がっていたのかもしれません。私は柱なのに。誰よりも強くなければいけないのに……』
「……そんなに気負わなくてもいいんじゃないかな?俺だって人に拒絶されるのは怖い。Aちゃんは弱くないよ」
「むしろ、強いんじゃないか?その不安をここまで隠し通してきたんだから。お前だって人間だ。弱いところがあってこその人間だろう?」
ふと頭に違和感を感じる。
尾浜さんが私の頭を撫でているんだと分かるのに数秒かかった。
『……えっと、尾浜さん?』
「あ、ごめん!つい……」
『いえ、いいんです。お二人とも、ありがとうございました。少し元気が出ました』
さて、そろそろ皆さんが戻ってくるでしょうか?
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ハル - 凄く面白かったです!大変な時期だと思いますが、これからも応援してます‼︎ (3月22日 19時) (レス) id: 0fe5dcb2f7 (このIDを非表示/違反報告)
名無し46937号(プロフ) - 初めまして!素敵な夢小説をありがとうございます!もしよければ忍術学園全員出動の段書いていただけませんか? (2月27日 22時) (レス) id: f091a3aa7a (このIDを非表示/違反報告)
kanayamamoto112(プロフ) - はじめまして。天女になった蝶柱第1章から見てます。リクエストなんですけどヒロインちゃんと1年は組がお茶会を開きそれに1年い組とろ組とそれぞれのクラスの先生が参加するが見たいです。 (2023年3月6日 18時) (レス) id: 763c9aa7d5 (このIDを非表示/違反報告)
麗羅(プロフ) - 蘭檸さん» ありがとうございます!亀更新ですが、これからも少しずつ書いていくのでぜひ読んでくださると嬉しいです! (2023年1月14日 18時) (レス) id: 90634de060 (このIDを非表示/違反報告)
蘭檸(プロフ) - 面白くて一気に読んでしまいました!更新楽しみにしてます! (2023年1月2日 16時) (レス) @page16 id: 9728c679fd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:麗羅 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/aji391/
作成日時:2022年4月25日 22時