半人半霊の一人前―【魂魄妖夢】[前編](星夢さんリク) ページ17
冥界の白玉楼に住む剣術指南兼庭師、人間と幽霊のハーフ(半人半霊)である少女。しかし剣術の腕前は未だ未熟のようで、日々の修行は欠かせないらしい。
そんな妖夢の元に剣術をも得意とする少女が訪れる。
「今日も修行してるんだ、妖夢」
「あ、Aさん。お茶お出ししますね」
「うん、よろしく〜」
屋敷の縁側に腰を下ろし、背にかけていた刀を腕に抱える。綺麗に手入れされた庭を眺め、深呼吸をする。
「Aさん、お待たせしました」
そうしているあいだに妖夢がさっそうとした歩きでお盆に和菓子と茶碗、急須を乗せ、Aの右隣に移動する。
「あいにく幽々子様がいくつか食べてしまっていたみたいで、これくらいしかお出しできませんが……」
「気にすることないよ。私もここに来る前、少し食べて来たんだ。食後にはちょうどいい」
「そうでしたか、なら良かったです」
皿に乗せられた和菓子を一口つまんで口へ運ぶ。
「美味しい……ありがとう、妖夢」
「いいえ、私にはこれくらいしか……」
その言葉を聞いたAは眉をひそめ、手を拭いてから、妖夢の手を掴む。
「え、ちょっと何ですかいきなり!?」
「自分を下にしようとする発言は控えたほうがいい」
「へ?一体、何を……」
「自分にはこれくらいしか出来ない、私なんて、と言った発言は控えろ。そう言ってるんだ」
「なぜ、そんなことを?」
「いや……ごめん、つい……」
掴んでいた手を放し、申し訳なさそうに顔を俯かせる。その様子に妖夢は疑問を隠しきれず、今度は妖夢がAの手を掴み、先程のことを問う。
「なぜあのような事を仰ったのですか?何か理由があったから、言ったのでは?」
「……まあ、そうなんだけど……ほら、私ってこういう性格だからさ、どうしても気になるって言うか……」」
「そうでしたか、すいません。分からないことは聞くべきだと幽々子様が仰られていたもので」
「そんなことで気を落とさないでよ」
微笑みながら妖夢の肩をポンと叩き、
「さてと妖夢、今日も稽古相手になってやる!」
腕に抱えていた刀を背にかけ、すっと立ち上がる。
「ありがとうございます!では、早速失礼しますね!」
鞘から楼観剣を抜き、広々とした庭の方へ移動する。正眼の構えをし、鋭い目つきでAを見る。
先程とは打って変わって、Aは表情と口調を本気モードに切り替える。
「よし、そのまま私の喉元を一撃で切り裂きに来てみろ」
「では……遠慮なく行きます!」
半人半霊の一人前―【魂魄妖夢】[後編]→←月の姫の願い事―【蓬莱山輝夜】(月霊 響さんリク)
32人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:狂霧@HAL | 作成日時:2017年12月1日 17時