白い菫〔百合短編集〕 (ページ1)

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慰めページ1

はぁぁぁぁぁぁぁ……と深い溜息をつくみっちゃん。
みっちゃんを心配そうに見つめるマスターは、私をチラチラと見ては「なんとかしてあげなよ」という視線を送る。私もなんとかしてあげたい気持ちでいっぱいですけど、と心の中で悪態をつく。
みっちゃんの頭を撫でる。みっちゃんの髪はふわふわで、いつまでも触っていられるような気がした。
みっちゃんはカウンターに突っ伏して、どんよりとした雰囲気を醸し出している。

「みっちゃん……?」
「……」

みっちゃんはずっと黙ったまま。私を呼び出して何も言わないって、何だか少し自分勝手すぎる。
でも私は別に怒ることもなかった。みっちゃんはこうやって私に慰めて欲しくて、ただ頭を撫でて欲しいっていうだけだ。
私もそれは長年の付き合いで把握してたし、今日呼び出したのは彼氏に振られたからだってのもなんとなく察してる。
でも、あまり黙られてると私だってどうすれば良いか分かんない。

「みっちゃん、」
「……」

みっちゃんはやっぱり黙ってて、私は静かに溜息をつく。
撫でるのをやめて、だらんとぶら下がるような手をぎゅっと握る。みっちゃんの手はカサカサで冷たくて、柔らかい。細い指は私がちょっと捻れば折れそうだな、と何回も考えた事がある。

右手は手をつないでいるので、左手で携帯をいじる。少し不便だけど、意外といける。
私は何回も開いた事があるみっちゃんのSNSアカウントを開く。「彼氏に振られた」「私の何がいけなかったのかが分からない」そんな投稿が目に入る。やっぱり振られたんだ、とみっちゃんをちらりと見てぎょっと驚いた。
みっちゃん、こっち見てる。
伏せた顔を横に倒して、私をじっと見つめてた。色素の薄い髪がみっちゃんの顔を隠していたけれど、パーツは判別できる程度。
少し怖いけれど、何だか凄い美しくて私は少し見惚れてしまった。

「みっちゃん、どしたの」
「……あかり、あたし、」

みっちゃんの瞳が写すのは虚で、光が宿っていない。でも私をしっかりと捉えていた。
みっちゃんの手が私の手を弄ぶ。指と指の間に指を絡めて、所謂恋人つなぎの形になった。
みっちゃんはその間もずっと私を見つめてて、少し気まずくなって珈琲を飲む。熱かった珈琲はぬるくなっていて、ちょうど飲みやすかった。

「あたし、あかりが好きよ」
「……私もみっちゃん好きだよ」
「なら、付き合お」

今度は私が黙る番だった。