△ 己を鼓舞せよ ページ38
「A！」
「A！」
「A！！！」
繰り返しわたしの名前を叫ぶ、つんざくような声が聞こえた。一気に意識が覚醒して目を開けると、五感が戻ってくる。ジリジリと焼けつくような痛みも、血の味も、致死量の疲労感も。
視界の端に蝶の羽のような柄がヒラリとひるがえる。しのぶさんは病葉の攻撃を軽い身のこなしで避けながら、隙をついて刀を振り上げる。これが柱か。下弦の三を相手にまったく引けを取らない、圧倒的な強さ。地面にのびているわたしを守るというハンデがなければ、一発で仕留めていただろう。
「なにを楽なほうに逃げようとしているんですか！！善逸くんを置いていく気ですか！？あなた、善逸くんをしあわせにしてやりたいって言ってたじゃないですか！？死んだら、私が、許さない！！
こんなところで死ねると思うな！！！」
蟲柱は舞い踊るように、機関銃のように、刀を振るう。鬼殺隊の女神が怒鳴る。わたしを鼓舞する。まるで別人みたいだ。しのぶさんがこんなに声を荒らげているのを初めて見た。童磨を倒すことに命を賭けるしのぶさんは、鬼狩りでありながら恋愛結婚しようとするわたしに、世間一般で言う女の幸せを手にしようとするわたしに、自分と、自分の姉と、看取ってきた女隊員たちを重ねているようだった。まるで、私達が望むことすらできなかった夢を、あなたが代わりに叶えてって言うように。
「何としてでも生きなさい！！何としてでも勝ちなさい！！あなたには死ねない理由があるんでしょう！！！」
そうだ。死ねない。わたしはこんなところで死ねない。わたしは何としても善逸と結婚してやるのだ。自分の名字を我妻に変えてやるのだ。うおおおと雄叫びをあげながら、血濡れた指に力をこめる。
ありがとう、しのぶさん。ありがとう、善逸。わたしをこっちの世界に引き戻してくれて。体はもうとっくに限界だと危険信号を鳴らしているけど、もう少し頑張ってくれと言い聞かせる。
「───雷の呼吸 陸の型───
電轟雷轟！！！！！」
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あき - うわぁ、HUNTERHUNTERも書いてくれるなんて……🥹🥹 (2023年1月30日 14時) (
レス) @page50 id: 099b645bba (このIDを非表示/違反報告)
まっひぃ - 善逸のそういう所好きだぁー！😁かわええ (2021年11月11日 15時) (レス) @page48 id: d24aae8d9d (このIDを非表示/違反報告)
ひとみちゃんDX(プロフ) - 今まで読んだ中で一番好き！ (2021年10月29日 12時) (レス) id: 0e9cb43b28 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ割り人形 - わあわあ好きだあ途中どうなったのってなったけどちゃんとハピエンで良かったああうわん嬉しすぎて嬉し涙が…というかヒロ◯カの小説も書いていらっしゃるなんて！今すぐ読んできます！あ、この作品めっちゃ良かったです！好きです！(唐突の告白 (2021年9月12日 7時) (レス) id: 7c01fc8068 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 sud .(プロフ) - とっても素敵でした。 (2021年9月9日 15時) (レス) id: a463316156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：有希
| 作成日時：2019年10月4日 22時
