△ じいちゃんとわたしたち ページ30
わたしたちは支給された隊服を抱えて、じいちゃんの待つ屋敷へと競争する。一刻も早く帰りたいのだ。
「Aちゃんてば、炭治郎っていうヤツとやたら親しげだったじゃない!?」
「いい子だよ!善逸もきっと好きなる!」
「も!?もって言った今!?」
「こまけぇな……そう言う善逸だってカナヲちゃんに見とれてたじゃん!!」
「俺はいいの!Aちゃんには向こうがついその気になっちゃう可能性があるけど、俺にはないもん!」
「……自分で言ってて悲しくならない?それ」
「うん今じわじわきてる……ゴハッ……でもいいんだよ。結局はひとりの女の子からモテたならさ」
「誰のこと?」
「……わかってるくせに」
わかんないよ。善逸みたいな耳持ってないし。教えてよ。
「絶対わかってるくせにさぁ」って善くんがもごもご言っているうちに屋敷についた。引き戸があいて開口一番に「やかましい」と叱られた。坂の向こうからわたしたちが話してるのが聞こえてたらしい。「そもそもお前らはいつも」とお説教が始まる。
「俺ら頑張ってきたんだからさぁ!生きて帰ってきたんだからさぁ!少しは褒めてくれてもいいんじゃな……」
善逸は最後まで言えなかった。じいちゃんにきつく抱きしめられたからだ。「お前らはいつも、いつも……」と声が震える。じいちゃんの涙でわたしたちの肩が濡れていく。どんなときだって涙を見せなかったじいちゃんが男泣きするから、もらい泣きしちゃったよ。
△
久しぶりに三人で夕飯を囲んだあと、じいちゃんがポツリポツリと語りだした。
「ワシの身の上話はしたことなかったの。まあ鬼狩りで柱になるくらいだから、どんなものかは予想がつくだろうが……
こうして片足を失い、子も孫も残せないで年老いる。それがワシの人生。ところが振り返ったところで、ちっとも寂しくないんだ。はてどうしてだろうと考えていると、お前らの騒がしい声が聞こえてくる。ワシの人生は悪くなかった。今はそう思える」
善逸は泣きながらじいちゃんに抱きついた。わたしもそうした。朝まだきが近づいて、蛍は眠りにつくんだろう。
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あき - うわぁ、HUNTERHUNTERも書いてくれるなんて……🥹🥹 (2023年1月30日 14時) (レス) @page50 id: 099b645bba (このIDを非表示/違反報告)
まっひぃ - 善逸のそういう所好きだぁー!😁かわええ (2021年11月11日 15時) (レス) @page48 id: d24aae8d9d (このIDを非表示/違反報告)
ひとみちゃんDX(プロフ) - 今まで読んだ中で一番好き! (2021年10月29日 12時) (レス) id: 0e9cb43b28 (このIDを非表示/違反報告)
くるみ割り人形 - わあわあ好きだあ途中どうなったのってなったけどちゃんとハピエンで良かったああうわん嬉しすぎて嬉し涙が…というかヒロ◯カの小説も書いていらっしゃるなんて!今すぐ読んできます!あ、この作品めっちゃ良かったです!好きです!(唐突の告白 (2021年9月12日 7時) (レス) id: 7c01fc8068 (このIDを非表示/違反報告)
朝霧 sud .(プロフ) - とっても素敵でした。 (2021年9月9日 15時) (レス) id: a463316156 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希 | 作成日時:2019年10月4日 22時