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染み渡るきみの記憶 ページ10

アイスが食べたくなってコンビニに出かけた。うだるような暑さとはまさにこのことを言うんだろう。蝉の声がうるさい。聞いているだけで暑い。ビニール袋をゆるく振りながらだらだら歩いていると、フードを目深く被った男がむかってくる。変な人。汗腺がバカになってるのかもしれない。



 そんな失礼なことを思ったのが伝わってしまったのか何なのか、男は擦れ違いざまに、わたしの方へ手を伸ばしておでこを鷲掴みにしてきた。プロレス技みたいに。わたしが声も出せないくらいビックリしていると脳みそが勝手に記憶を再生し始めた。



 まず目に飛びこんできたのは、焼け野原。真っ赤な炎が踊るように揺れて、民家を舐めるようにして次々と焼いていく。煙たさに息ができなくて、ゲホゲホと咳き込んだ。このままここにいたら死んでしまう。そんな黒煙だった。人、人、人。着物を着た人たちがどこに行けばいいのかわからないのに逃げまどっている。



 これは、これは誰の記憶なんだろう?わたしの知らない記憶を流しこまれて、眼球が飛び出してしまいそうなひどい頭痛がする。離して!離してよ!こんなの見たくない!頭を振りはらおうとするのに、痛みにその気力さえ奪われて、わたしの頭を掴む男の力を借りてかろうじて立つので精いっぱいだった。



 男が手を離した途端、わたしはお尻から後ろへ転んだ。そのまま崩れるように民家の塀に寄りかかる。



「ったく、あの御方の気紛れにも困ったもんだよ、俺だって暇じゃねえんだ」



 男は何やらぼそぼそ呟きながら、どこかに消えた。まともに歩けるようになった頃にはアイスはぐずぐずになっていた。



*


 超体験したあと家に帰るとママが「夏休みにおばあちゃん家行くよ」と言ってきた。夏休みね。もうそんな時期か。わたしは液状になったアイスを冷凍庫に突っ込んだ。



「ねーママ」

「ん?」

「前世、武将かも」

「あらいいわね」



 相手にされてない。そらそうか。ソファに寝転んであやふやな記憶を繋げようとする。何かを忘れているような気がする。何かとても大切なことを。

髪の長い男の子→←現代文明が引き合わせてくれる



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設定タグ:どろろ , 百鬼丸   
作品ジャンル:恋愛
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翡翠(プロフ) - 展開が神‼です!どろろにはまったのホント最近なんですけど、マジで最高です! (2022年3月23日 16時) (レス) @page17 id: d32df67ed7 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 朔弥139さん» はじめまして!感想うれしいです。アニメ完結から2年が経った作品でもあなた様のコメントをいただけたことで、いつかやろうと思っていた加筆修正に着手することができました。本当にありがとうございました。 (2021年7月3日 9時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
朔弥139(プロフ) - 初めまして、何度読み直しても好きな作品です。本当にありがとうございます (2021年6月12日 11時) (レス) id: 327451071d (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - あやかさん» 全て!?ありがとうございます……!ひさしぶりに自分で読み返すと拙く読みづらい文だと感じましたが、そんな風に言っていただけて……ありがたいです。またどこかでお会いできたらと思います!! (2020年3月17日 11時) (レス) id: c151be2953 (このIDを非表示/違反報告)
あやか(プロフ) - 全て読ませていただきました。ほんとに素敵な物語をありがとうございます。『どろろ』次回作をお待ちしています。よろしくお願いします。 (2020年3月9日 21時) (レス) id: e756cf6e94 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:有希 | 作成日時:2019年6月28日 20時

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