63 あーんしろ ページ18
「とりあえずジャポンに行こうぜ。そしたらその中二病……ないし記憶喪失……は直るはずだからさ」
そうして予定より早めにくじら島を引きあげることにした。マンガみたいに屋根にのぼって見せられた星空は、言葉ごときじゃ表せないうつくしさだった。誤解のないように言っておくけど、中二病でも記憶喪失でもないからね?
*
ハンター試験後に名刺をもらったおかげで、彼とアッサリ連絡がとれた。東京駅によく似た建物の前で、その人物は待っていた。
「ハンゾー!」
わたしが手をふると、「よっ」と手を上げてみせた。観光案内をするって約束してくれていたからね。
「ようこそ忍びの国へ!遠かったろ?」
「ほんとにね。まだ時差ボケが抜けてないし」
「座りすぎてケツいってぇよ」
「ジャポンって空気がきれいなんだね!」
いっぺんに喋るとハンゾーは笑った。4人で街を回りながら近況報告する。彼はもう念を使いこなしていた。わたしたちが悔しがると「6つも離れてるやつらに負けてたまるか」って笑った。
予想どおりジャポンは「日本」と変わらなかった。渋谷をもじったような駅にはあのビルそっくりなやつが建っていた。唯一ちがうのは看板の文字くらいか。その懐かしさにわたしの目は熱をもつ……わたし?わたし、わたしは、わたしの名は、久しく忘れていた漢字がおぼろげに浮かんでくる。わたし、いま、どこにいるの?
「あーん」
「……え?」
キルアがわたしにスプーンを向けたまま不思議そうな顔をする。
「オレのたのんだアイス、味見したいんじゃなかったの?」
「ああ……そうだね」
婚約者A、一生の不覚。キルアからの「あーん」を楽しめないなんて。人工的なメロン味がする。ジャポンの夏は蒸し暑い。カフェを出た瞬間に熱気におそわれる。毛穴が一気にひらいた気がした。蝉が鳴いている。夕暮れの陽ざしで手足が痛い。ここは、ここはどこだ?わたしは日本の田舎で学生をしていたはずで……何が起きているの?わたしは何者なの?
「じゃあ行くか!オレの稽古場へ!!」
抹茶を口のはしに付けたハンゾーがグルッとふりむいた。
494人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
有希(プロフ) - mayaさん» いやほんとそれな…!!イル兄は他のどんな作品にもいない魅力的なキャラをしてるから一生バッキュンされてるわ…これからも出来る限り出演していってもらいたいね…! (2021年7月10日 5時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - 表現というか、もはや思ったこと馬鹿正直にぶちまけちゃってるね!強引、配慮がない、しつこいの全てがつまってるイルミに一生バッキュンされてる…… (2021年7月4日 14時) (レス) id: 8486f071d9 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - mayaさん» あのシーン個人的にめちゃくちゃ好きなのでmayaちゃんにギュンしてもらえて嬉しい笑笑 イル兄に甘くて優しいセリフとか言わせたくなくて、それイル兄じゃないし、ああいうぶっとんだ表現をしてくるのがイル兄だろ(偏見)!っていう私の性癖が爆発してたね! (2021年7月4日 8時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
maya(プロフ) - ん’’ん’’!!イルミさんにギュンです…あんなことを言わせるなんて……有希ちゃん強者…!! (2021年7月3日 16時) (レス) id: 8486f071d9 (このIDを非表示/違反報告)
有希(プロフ) - 名前さんさん» いつもコメントしてくださいよォォォッ!!(血涙)嘘です。今回もらえただけでとても嬉しいですありがとうございます!そんな風に本作のことを言ってもらえると励みになります。どうぞ完結まで末永くよろしくお願いします! (2021年6月12日 8時) (レス) id: 67c2a31e1e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:有希 | 作成日時:2021年4月9日 18時