黙ってkissをして【ぐる】 ページ2
私の恋人は面倒くさい。
饒舌に語ったかと思えば、深く思考して戻ってこない。
まぁ、無知な私にも分かりやすく語ってくれるので、彼の話を聞くのが大好きだし、ぐるぐるうろつきながら何かを考えてる姿は見ていておもしろ可愛いので問題ないのだけど。
今もなんだか小難しくまくし立てている。
こんな時はあれだ、何かが気に食わないのだろう。
私何かしたかな？
「ね、ぐるちゃん何で怒ってるの？」
よく分からないと首を傾げながら問いかける。
その途端ピタッと言葉の雨が止んだ。
どこかしら甘やかな風が、二人の間を過ぎ、静寂があたりを満たす。
公園の外灯がぐるちゃんに影を作り、表情を隠すので私には分からないままだ。
「分からんのか」
「うん、分かんないや。ただぐるちゃんが怒ってるのだけは分かる」
「怒っているのが分かるのに、理由は思い至らないと」
「正直言っちゃうとね。だからちゃんと教えて？」
惑うように、思案するように指をはむ。
その仕草にすらドキッとしてしまう私は、相当ぐるちゃんにやられているんだろうなぁ。
「なんでキスしたんや」
「はい？」
突然何を言うんだろう？
動揺して、疑問に疑問で返してしまった。
「浮気とかするわけないんだけど」
「お前、数十分前のことすら忘れたんか？」
数十分前……。
もしかして、あのこと言ってるの!?
「まさか会長さんのほっぺにしたやつのこと言ってるの？」
「よう覚えとるやないか」
「だって、もうお爺ちゃんだよ!?」
ちょ、ぐるちゃん。それを浮気と言われると辛いんだけど。
会社の会長さんは今年で８８歳。米寿を祝う催しで数人の女の子がサプライズでほっぺにチュウをした。私一人だけじゃないし、むしろ微笑ましい感じだったのに。
「爺さんだろうが男やろ」
「ぐ、ぐるちゃ〜ん」
情けない私の声。目の前のぐるちゃんはあくまで真剣だ。
「Aよう考えてみ？ 俺が同じことしたらお前はどう思うんや」
８８歳のおばあちゃんのほっぺにチュウするぐるちゃん。
「うん、微笑ましい」
「おまえなぁ。嘘でも嫌って言わんかい」
「可愛らしいもの」
はぁ。なんてまた溜息つかせちゃった。
さて、どうしたもんかな？ こうなると長いんだよね。
よっし、こうなったら。
片手で顔を抑えてるぐるちゃんのネクタイを引っ張った。
びっくりしたその唇にサプライズのkissを一つ。
「ね、黙ってKissすればいいと思うよ？」
瞬き一つ、あなたは耳を染めて「かなわんな」と呟いた。
黙ってKissして下さい【とん】→←猫は人に懐くのかそれが問題だ【ぐる・neko】
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作者名：unknown | 作成日時：2017年1月29日 2時
