【wrwrd!】深く長く、愛を吐く (ページ7)

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Madly in love【syp】ページ7

高校二年生になって数ヶ月。
一年生が入学し、『先輩』になったのだとやっと自覚し始めた、そんな今日この頃。

私はとある一年生に懐かれてしまっていた。

彼に見つからないようにそろりそろりと裏門から帰路につこうとした私の耳に届いたのは、後ろから近付いてくる足音だった。
「先輩、なに先に帰ろうとしてんすか？」
…見つかった。ゆっくりと振り返ればいつも通り何を考えているのかよく分からない笑みを浮かべる彼がいた。こうなればもう、足音を立てることさえ気を付けて周りを警戒するような不審な行動をとる必要もない。大股で、できる限り早いスピードで家に向かって歩き出す。
「おーい、無視しないでくださいよ。」
そんな声とともにすぐそばまで来てしまう彼。…自分の短足が、こんなにも憎いと思ったことは生まれてこのかた一度もない。
「何。」
「いや、もっとゆっくり帰りましょう？」
「一緒に帰る約束してない。」
「お喋りしながら帰った方が楽しいやろ？」
「…敬語。」
「お喋りしながら帰った方が楽しいですよ。」
「私は一人で帰る方が好き。」
その間も私はなんとか彼を振り切ろうと、休むことなく足を動かすのに、隣の長身は余裕そうにゆったり歩くだけ。思わずキッと見上げるように睨めば、私の意思に反して彼は穏やかに笑った。

「上目遣いなんて、どこで覚えたんすか？可愛いっすね。」

『可愛い』
彼のような長身文武両道イケメンにそんなことを言われたら、普通の女子は失神するほど喜ぶものなのだろうか。私だって、最初に言われた頃こそ、頬を赤く染めたりもしたものだが、彼に付きまとわれること数ヶ月。毎日毎日会うたびそう言われていたら慣れてしまうし、なにより、からかっているだけなのだと思わざるを得なかった。彼にとって『可愛い』とは『おはよう』とか『また明日』などの挨拶と同じくらいの価値の言葉なのだ。

「ショッピくん。」

「え、やっと俺のこと名前で呼んでくれるようになったんすか！」

お前は犬か。と突っ込みたくなるほど、見えない尻尾をブンブン左右に振る彼。
「呼べって言ったのはあなたでしょ。」
「だって、あなたとか君とかでしか呼んでくれないの寂しかったんですよ。」
寂しい。そんな言葉にだって惑わされたりはしない。きっと何人もの女の子にそう甘く囁いてきたに違いない。