【wrwrd!】深く長く、愛を吐く (ページ38)

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Ⅲ ページ38

定時で会社を出て予約していたケーキ屋さんへ。
本当は年齢分の本数のロウソクが欲しかったけれど、『松明みたいになりますよ…？』と店員のお姉さんに本気で心配されてしまったから、数字の形のロウソクを二つ買った。途中で寄ったスーパーで出来合いのお惣菜をいくつか買って、ケーキを崩さないように帰宅するミッションを無事にこなした。

家に着き着替えてキッチンに立つ。彼が帰ってくるまでおそらくあと一時間半ほど。その間にちょっとしたご飯ものと具沢山のスープを。

料理の方がひと段落着いたところで、ただいまの声と共に玄関の扉が開く音がした。

「おかえりなさい、ナイスタイミング。」
「ええ匂いがする～あったかいおうち～幸せ～。」

そのまま私を抱きしめようと伸びできた腕を避ける。

「なんで！」
「帰ったらまず手洗いうがい！部屋着に着替えて洗濯物は洗濯機に入れる！」
「俺今日誕生日やのに！」
「関係ありません。」

シッシッ！と追い払うように手を振ればあからさまにガッカリした様子で洗面所に行く彼に思わず吹き出しそうになってしまった。

全てを終えた彼が席に着く頃には、テーブルの上に料理を並べ終わっていて。何飲む？という私の問いに元気よく『ビール！』と答えた彼の前によく冷えた銀色の缶を置き、自分用に苺が描かれたカラフルな缶を置く。二人揃ってプルタブを起こせばぷしゅっと炭酸が弾ける音。

「改めまして、鬱くん。お誕生日おめでとう～！」
「ありがとう～！」

缶同士がぶつかると想像よりも鈍い音がした。