年上彼女 ページ14
『係長さん、ちょっといいですか』
深雪さんの肩が大袈裟にはねる。
俺たちの楽しい飲み会はどうやらここで終了らしい。声を掛けてきたのは例の男だった。
「な、んですか」
不愉快さを少し出しながらも深雪さんは男に振り返った。薮くんも一緒に。
『私もう帰るんですが、話したいことがあるので外までいいですか』
そう言われて深雪さんは腰を上げようとするけど、薮くんがそれを許さなかった。
薮『話ならここでどうぞ』
「薮くん、」
薮『深雪さん、行くことない。ここで出来ない話ならしなくていい』
薮くんのその言葉に俺たちにも緊張が走る。薮くんは男を睨んで完全に臨戦態勢。光くんもそんな薮くんを止めることはなかった。
男はため息をついた。仮にも上司の前で。
『この間の話、考えてくれましたか』
月曜日のことは、みんな知念から聞いて知っている。俺はこの1週間仕事に来るのが嫌だった。この男の顔を見たら殴りそうだったから。
深雪さんと薮くんが毎日辛そうにしているのに、この男は平然とした顔で仕事していたんだ。事情を知っている俺の前で毎日ニコニコ笑ってた。
「それは、その場で断ったはずです。その話なら私も聞く気は無いです」
深雪さんはハッキリとした口調で言った。
それでも男は怯むことなく話を続ける。
『そんなこと言うが、バレたらお前も困るだろ』
卑怯なことを言う男に本気で腹が立つ。山ちゃんと知念は怒ってるのが完全に顔に出てる。
「そんな昔の話、バレたって別に困らないわ」
深雪さんはきっと俺たちがすべて知っていると分かっているから、強気でいられるんだと思う。しっかり男の目を見て話している。
『それは』
薮『あんたしつけーな』
男の言葉を遮って薮くんが口を開いた。
深雪さんや俺たちが怒っている以上に、薮くんは怒ってるんだ。ずっと。
薮『自分が離婚したの深雪さんのせいにしてんじゃねぇよ。この人は自分が寂しい時だけ使っていいような都合のいい女じゃないんだ』
俺たちが聞いたことないような声で、薮くんは淡々と話す。
薮『自分が言ったことでこの人がどれだけ傷付いてるか分かってんだろ。そんなヤツに深雪さんは渡さない。俺たちが許さない』
薮くんが、俺たちって言ってくれたことが嬉しくて、俺はまた少し泣きそうになった。
『こいつの彼氏は君か』
薮『だったらなんだ』
薮くんは深雪さんの肩を抱き寄せた。深雪さんは珍しく嫌がらなかった。
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作成日時:2017年5月8日 9時