永続的恋愛

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『ぁっん、あぁ、やまだ、ぁ…』


ホテルの壁が薄いことをもちろん俺は知っていた。

でもたぶん俺の隣で耳まで真っ赤にしてる大ちゃんは予想もしていなかっただろう。

壁が薄いことも、山田たちがおっぱじめることも。

慧くんのこんな可愛い声聞いてごめん、山田。でも俺も聞きたくて聞いてるんじゃない。


『大丈夫？大ちゃん』

『だいじょ、』


『ゃっあン！』


『…ばない…』

『うん、だよね』


ていうか山田、お前も壁薄いこと絶対分かってんだろ。

姿の見えない(声は聞こえてるけど)山田に心の中で悪態ついても仕方ない。


『外出る？』

『出る。…あ、でも薮さん、学会で疲れてるでしょ？』


大ちゃんたちとは途中で別れて半日観光、半日学会だった俺と山田は確かに疲れてる。

まぁ山田が疲れてるかは知らないが、こんなことする元気がありゃ充分だ。


『テレビとか観て、ゆっくりしよ？』


俺を気遣ってくれる大ちゃんは本当に出来た恋人だ。

でもここにいるのは中々にマズイ。

嫌でも耳に入ってくる慧くんの悩ましい声に俺は絶賛悩まされている。

俺の俺も元気になりそう。大ちゃんとホテルに2人きりなんていうシチュエーションが余計にダメだ。


『ここにいると、変な気分になりそう』

『ぁ、そっか…えと、でも…』


察したらしい大ちゃんはまた頬を赤く染めながらしどろもどろ。可愛い。


『薮さんも、したい…？』


あぁそんな可愛い顔で上目遣いなんてダメだって本当に。試されてる気分。

しかしなんて答えるのが正解だろう。

したいかしたくないかで言ったらしたいに決まってる。

恥ずかしがり屋の大ちゃんが壁が薄いと証明された部屋でそれを許してくれるとはとても思えない。

答えられない俺に痺れを切らした大ちゃんはとんでもない発言をしてみせた。


『俺、いいよ…？いのちゃんたちはきっと夢中だし、俺、声…我慢する、から…』


なんっでそんなに可愛いの大ちゃん。天使かよ。

俺が言ったわけじゃない。俺が誘ったわけじゃない。それなのにいいよって言ってくれるなんて。


『大ちゃん、ほんとにいいの？』

『うん…薮さんに、我慢して欲しくない…』


なんって甲斐甲斐しいんだ、俺の彼女。可愛すぎる。健気だ。好き。


『手加減しないよ…？』

『ん、しないで』


あぁもう無理。可愛い。好き。声我慢しないで。声聞かせて。

我慢も限界にきて唇同士が触れ合う直前。


『薮ちゃーん、ご飯いこー』


山田、嫌い。

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