永続的恋愛

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最近の大きな変化は、俺もいのちゃんも、仕事用の携帯を肌身離さず持ち歩くようになったこと。

プライベートの携帯でさえもあまり人前では出さないのに、暇さえあれば質素な携帯をいじるなんて。

無意識であろういのちゃんには、何も言えない。


あれから、いのちゃんには何も聞けずにいる。

というよりも、聞く意味を見い出せなくて、何を聞けばいいか分からなくて、尻すぼみしていた。

あんないのちゃんの顔は初めて見たし、お客様の過去にも深入りしようと思えなかった。


過去に山田さんをフったのがもし本当にいのちゃんだったら。

いのちゃんの昔の相手が山田さんだったら。

確認も出来ないのに、俺は期待に胸を馳せていた。


『大ちゃん、元気？飲みすぎてない？俺のこと忘れてない？』


週に一度、薮さんからこうして生存確認のようなメールが来る。

結局お店に来てくれたのはあれから1ヶ月後、もちろん山田さんも一緒に。

それ以来2人ともぱたりと姿を見せなくなった。

俺たちが想像している以上に医者は忙しい職業らしい。

お店に来たって高いお金を払うだけ。
かといってお店にも来ない人と店の外で会うことは許されない。

会いたい気持ちをかき消すように、俺も薮さんへメールを返したり返さなかったりする。

返さなければ、もしかしたらお店に来てくれるかもしれない。
そんな淡い期待を何回して何回裏切られたか分からない。


いのちゃんの方も同様、山田さんがお店に来ることはなかった。

2人同時に携帯から顔を上げて、ぱちっと目が合う。

へらっと、どちらからともなく笑った。


『ワガママだよなぁ…お客さんなんか、絶対ありえないって思ってたのに』

『まぁ、ね…』

『いのちゃんは連絡とってんの？』

『…全然。もう来ないかも、って、いつも思ってるよ』


恋は盲目。

恋とは恐ろしい。

あんなになにを考えているか分からなかったいのちゃんが、少しずつ本音を話すようになってくれるのだから。

でもいのちゃんがどれほど山田さんのことを好きなのか、俺は1番よく知っているつもりだ。


俺が気にすべきは、自分のことだったのに。

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