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顔も知らない女友達に妬きながらそう告げると、はーーっと大袈裟にため息をつかれる。そんなAにムッとしたら手元が狂って、画面にはゲームオーバーの文字。
｢研磨、そんなんだからダメなんだよ｣
｢え｣
｢いつどこで運命の人に会うか分からないんだよ？ だからいつでも可愛い私でいないとっ！｣
そう言って、ふんっと意気込みながらAはこっちに振りかえる。同時にふわっと広がる丁寧に巻かれた髪。華やかにきらきらと光る目元がくるりとカールしたまつ毛に縁取られている。じゅわりと桃色の頬とぽってり色付いた唇は普段スウェットでいるときよりも健康的に見えた。
まるでどこかの国の人形みたいな可愛さに、思わず息を飲む。
｢……ほんとにその格好でいくの？｣
｢いくよ！ 言ったでしょ？ 運命の人に出会えるかもしれないからっ｣
うきうきとした様子で立ち上がり、ヘアアイロンや化粧道具をまとめ始める姿をまたぼんやり見つめる。くるくると柔らかく揺れる髪も、鮮やかに彩られた華やかな笑みを浮かべる顔も、惜しげなく出されたしなやかな足も、動く度にふわりと広がる甘い香水の香りも、下を向いて流れた髪から見える真っ白な項も、頭のてっぺんから足の先まで全部が可愛く愛おしい。
だめでしょ、そんなの。そんな可愛い格好してったら、ほんとに出会っちゃうじゃん。
荷物をまとめ終わって家を出ようとするAの腕を、反射的に掴む。くるりと不思議そうな顔をして振り返ったAは、やっぱり可愛い。
｢どした？｣
こんなに可愛かったら気づかれちゃうじゃん。
｢……だめ｣
こんなに可愛かったら取られちゃうじゃん。
｢え？｣
だから、
｢おれのだから、だめ｣
運命の人とか、出会っちゃだめ。
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作者名：あいう | 作成日時：2024年2月14日 5時
