別れの話�� ページ49
『なし』
「んー…服に隠れちまうけど別にいっか！」
「うん。わ、ひゃっこいな。」
「ひゃっこいって何？」
「冷たい、みたいな？ どこだっけ、北海道の方言じゃなかったか？」
首筋に当たる金属の感触が思ったより冷えていて、咄嗟に出てきた言葉。
昔、演劇教室の台本で見たっけ、と何となく思い出した。
「なぁA、これ絶対今言うことじゃないと思うんだけどさ、」
「何だー？」
「俺、もうおまえに会えないかも。」
真剣な声に、ピキッと空間が固まる。
芹都くんは、Aの顔を覗き込んだ。
「え、無反応かよ。」
「……うそ？」
「んーん、嘘じゃない。」
「何で、って聞いてもいいか。」
「____海外に行くことになった。」
サラッと言った言葉には、やけに重みがあった。
ネックレスをつけるのに手間取っているのか、部屋には金属の擦れる音しか聞こえない。
「ん、むずいなこれ。」
「何で海外に行くんだ。」
「おまえ……意外と冷静だなぁ。泣きつかれる覚悟できてたのに。」
「何で。」
「あー……親父が海外の女とデキたから、あっちに越すことになったんだよ。」
言いづらそうに芹都くんが口を開く。
年頃の女の子に自分の親が遊び人だと思われるのはさすがに恥ずかしいのだろうか。
「帰って、こないの？」
「おまえさぁ、そんな可愛い顔してもダメだぞ？」
「こないの、って聞いてんの。」
「そ、そんな怖い顔してもダ……ごめんなさい急に立ち上がらないで。」
「大事な話の間に最悪な茶化しを入れるんじゃねえ。」
Aが呆れたようにため息をつく。
まさか初めて家に招かれたタイミングで、言われると思ってなかった。
「帰ってくるにしても親父に金借りなきゃなんないから……よくわかんねぇ。」
「……」
「ゔっ、じゃ、じゃあ半年！ えっと来年の六月？ 帰るから、そんな顔すんな。」
どーどー、とAを落ち着かせる。
不服そうに眉を寄せながらも、Aはまた床に落ち着いた。
「ピアス。」
「ん？」
「帰ってきたら、いちばんに私のピアス穴開けんの手伝え。」
「……いーよ、だったら今度は俺がピアス買ってやるよ。貰いもんじゃなくて。」
こくん、と力なくうなずくAの頭を優しく撫でる。
今更、そういえば芹都くんの家には表札がなかった、と思い出しながら、Aは俯いた。
____事実は形を変えることなく、彼女の人生から『芹都くん』は消えた。
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生しょうが(プロフ) - にゃーちゃんさん» うわぁぁ！更新できず申し訳ないです！！面白いだなんて照れますね…！これからも読んでくれると嬉しいです！！ (2022年12月17日 12時) (
レス) @page26 id: 9fefad8449 (このIDを非表示/違反報告)
にゃーちゃん - 初コメ失礼します！とても面白くて、引き込まれる様に一話から最後まで全部読んでしまいました…!!続きがとても気になります！更新頑張って下さい、楽しみにしてます！ (2022年12月14日 15時) (レス) @page25 id: fd6863f2a6 (このIDを非表示/違反報告)
生しょうが(プロフ) - 空桜さん» こ、こんな長編を一気読み…!?（大歓喜）ハマっていただけて嬉しいです！あとちょっとで投稿ペースも戻ると思うので、これからも見守っていてください…！笑 (2022年11月23日 20時) (レス) id: 1856a8e0e6 (このIDを非表示/違反報告)
空桜(プロフ) - 初めまして、更新お疲れ様です。昨日から一気読みするくらいハマってしまいました笑 イベントやスカウトを交えつつオリジナルのお話を読める作品は中々なかったので新鮮です。お知らせも読みました。ご自身のペースで無理はなさらずに頑張って下さい (2022年11月19日 21時) (レス) id: bedbd72616 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：生しょうが x他1人 | 作成日時：2022年10月29日 16時
