決定事項 ページ6
つままれた頬を一度思いっきり引っ張られて、それから、パチンと離される。
「痛っ!」
目の前で意地悪に笑う高嗣は、この上なく満足気で、ちょっと腹が立つ。
それでも、離れた指先が、今度は、優しく私の頬を撫でて、付いていたであろうブラックペッパーを払い落とした。
「自分の分は、持てよ。」
高嗣の指先に、うっかり見とれていると、優しくない言葉とは逆に、山盛りのポテトと自分のグラスを持った高嗣が、そう言ってカウンターを離れた。
千賀くんみたいなわかりやすい優しさや、可愛さじゃない。
でも、高嗣のこういう小さな仕草や、分かりづらい優しさ、それから、子供っぽいヤキモチに、不覚にもときめいてしまう私は、どうかしているのかもしれない。
慌てて、自分の分のグラスを持って、その後を追って隣に並ぶ。
四角い肩は、男の子そのもの。
でも、その先の腕はしなやかで、繊細なまでの指先には、今日もシルバーのリングがあった。
「あっ!」
高嗣のリングを見て、急に思い出した自分の指のリング。
「なんだよ。ビビらせんなよ。」
私の声に、びくっとして、立ち止まった高嗣が不審な目を向けるのを「何でもない」って、曖昧に笑ってやり過ごす。
ペアリングじゃないのに、とんでもなく恥ずかしい。
外すべきか…、でも、急に外したら不自然じゃないかな……。
親指でリングを触りながら、高嗣に気づかれていないことを祈った。
「A。」
「はいっ!?」
そんなことを考えていたら、急に呼ばれた自分の名前に、必要以上に動揺した返事をして顔を上げると、こっちを見ない高嗣が少しだけ歩調を緩めて言った。
「この後、部屋、行っていい?」
「えっ?」
「……てか、行く。」
高嗣の耳が赤くて、それに気づいたとたんに自分の頬が熱くなるのがわかった。
私の返事は、元から聞くつもりもなかったみたいで、立ち止まった私を置き去りにして、席に戻った高嗣は、「おまたせ」って、拓海の前に山盛りのポテトをおいて笑った。
それから、千賀くんを無視することも、不機嫌な態度をとることもなかった。
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植尾あい(プロフ) - あいこさん» 初めまして。何度も読み返していただいているなんて、とてもうれしいです。ありがとうございます。まだまだ先が長いお話ですが、のんびりマイペースで書き続けますので、宜しくお願い致します。 (2020年12月23日 11時) (レス) id: 2932ce7796 (このIDを非表示/違反報告)
あいこ(プロフ) - 初めまして。今まで何度も読み返してるほどファンです!これからも楽しみにしています。素敵なお話をありがとうございます(^^) (2020年12月16日 17時) (レス) id: 7af89e0405 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ソフィアさん» ありがとうございます。読みやすく、書きやすく、修正したら、必ず元に戻しますので、待っていてください!ソフィアさんのコメント、いつも励みになっています!これからもよろしくお願いします(^^) (2020年8月17日 21時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - 承知です。待ちまーす。 (2020年8月17日 18時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - いいっ、スッゴクいい。何てこと無い、ヤキモチやかれる場面だけど、彼女の嬉しい気持ちがすごく良くわかります! (2019年11月9日 7時) (レス) id: cfeb0a9590 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2019年10月22日 22時