検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:18,438 hit

決定事項 ページ6

つままれた頬を一度思いっきり引っ張られて、それから、パチンと離される。


「痛っ!」


目の前で意地悪に笑う高嗣は、この上なく満足気で、ちょっと腹が立つ。

それでも、離れた指先が、今度は、優しく私の頬を撫でて、付いていたであろうブラックペッパーを払い落とした。


「自分の分は、持てよ。」


高嗣の指先に、うっかり見とれていると、優しくない言葉とは逆に、山盛りのポテトと自分のグラスを持った高嗣が、そう言ってカウンターを離れた。


千賀くんみたいなわかりやすい優しさや、可愛さじゃない。

でも、高嗣のこういう小さな仕草や、分かりづらい優しさ、それから、子供っぽいヤキモチに、不覚にもときめいてしまう私は、どうかしているのかもしれない。


慌てて、自分の分のグラスを持って、その後を追って隣に並ぶ。

四角い肩は、男の子そのもの。
でも、その先の腕はしなやかで、繊細なまでの指先には、今日もシルバーのリングがあった。


「あっ!」


高嗣のリングを見て、急に思い出した自分の指のリング。


「なんだよ。ビビらせんなよ。」


私の声に、びくっとして、立ち止まった高嗣が不審な目を向けるのを「何でもない」って、曖昧に笑ってやり過ごす。


ペアリングじゃないのに、とんでもなく恥ずかしい。


外すべきか…、でも、急に外したら不自然じゃないかな……。


親指でリングを触りながら、高嗣に気づかれていないことを祈った。


「A。」

「はいっ!?」


そんなことを考えていたら、急に呼ばれた自分の名前に、必要以上に動揺した返事をして顔を上げると、こっちを見ない高嗣が少しだけ歩調を緩めて言った。




「この後、部屋、行っていい?」



「えっ?」



「……てか、行く。」




高嗣の耳が赤くて、それに気づいたとたんに自分の頬が熱くなるのがわかった。


私の返事は、元から聞くつもりもなかったみたいで、立ち止まった私を置き去りにして、席に戻った高嗣は、「おまたせ」って、拓海の前に山盛りのポテトをおいて笑った。




それから、千賀くんを無視することも、不機嫌な態度をとることもなかった。



.

高利貸し→←ヘタクソ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (95 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
670人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

植尾あい(プロフ) - あいこさん» 初めまして。何度も読み返していただいているなんて、とてもうれしいです。ありがとうございます。まだまだ先が長いお話ですが、のんびりマイペースで書き続けますので、宜しくお願い致します。 (2020年12月23日 11時) (レス) id: 2932ce7796 (このIDを非表示/違反報告)
あいこ(プロフ) - 初めまして。今まで何度も読み返してるほどファンです!これからも楽しみにしています。素敵なお話をありがとうございます(^^) (2020年12月16日 17時) (レス) id: 7af89e0405 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ソフィアさん» ありがとうございます。読みやすく、書きやすく、修正したら、必ず元に戻しますので、待っていてください!ソフィアさんのコメント、いつも励みになっています!これからもよろしくお願いします(^^) (2020年8月17日 21時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - 承知です。待ちまーす。 (2020年8月17日 18時) (レス) id: 06f6b1f19d (このIDを非表示/違反報告)
ソフィア(プロフ) - いいっ、スッゴクいい。何てこと無い、ヤキモチやかれる場面だけど、彼女の嬉しい気持ちがすごく良くわかります! (2019年11月9日 7時) (レス) id: cfeb0a9590 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:植尾あい | 作成日時:2019年10月22日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。