しまった! ページ45
どうして気になるの?
どうして心配してくれるの?
聞きたいのに、怖くて言葉が出てこない。
目の前にいるニカは、確かな存在なのに、私の知らない世界に生きるニカを知ってしまったせいで、身動きがとれなくなつた。
お互い、その先を口に出せず立ち尽くす。
切なさが募る胸の中、弱虫な自分。
抱きしめた背中は、独り占めできない夢。
ニカの視線から逃れる様に、俯いた瞬間、車のヘッドライトが私たちを照らした。
「……A。」
近づく車の音に、ニカの声が優しく私を呼んだ。
「こっち。」
大きな手が私の腕を掴んで、車から遠ざけるように、そっと引き寄せる。
車道に背中を向け、通り過ぎる車を確認する様に横目で見送る横顔は、クソガキなんて程遠くて、胸が鳴った。
もう、彼氏のいない生活にも慣れきっていたし、元カレとも冗談を言えるくらいに友達に戻っていた。
佐知や拓海といると楽しくて、恋なんてしなくてもいいって思ってた。
ひとりでもいいって、思ってたのに……。
なのに、どうして?
「あぶねぇな。」
車が完全に見えなくなったのを確認してから、誰にとも無く呟いて、離された腕。
長い指が柔らかに握られ、下ろされていくスピードに優雅に舞う様だった。
「ニカっ……、う、わぁっ!!!」
何を言おうとしたのか、わからない。
でも、とにかく、何か伝えなくちゃって、前のめりになる気持ちに力が入りすぎたのか、肩に掛けていたショップのバッグが勢いよく滑り落ちた。
「……な、何やってんだよ。フハハ」
ぶちまける程ではないけど、足元に散らばる今日の戦利品。
それを見て前かがみに笑い転げるニカ。
恥ずかしくて、慌ててかき集めようと屈むと、可笑しそうにお腹に手を当てたニカが同じように目の前に屈んだ。
「どんくさっ。プッ」
「……ほっといて。」
可愛げなく言い返して、手にしたビニールの端を引き寄せると、運悪くそれは、本屋の袋。
「しまった!」と、思った時は、もう遅くて、佐知の口車に乗せられて買った、ヒラヒラぶりっ子の70%OFFだった下着よりも見られたくなかったアイドル雑誌を、本人の前に、今度こそぶちまけるハメになった。
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植尾あい(プロフ) - ふじのんさん» ウフフ 友達2人についても気になっちゃうあたり、マニアックですよ!(笑)でも、その期待を裏切らずに、友達も含めて、この先の展開を楽しみにしていて下さい!二階堂くんの不器用な優しさとか愛情表現、キュンとしてもらえたら嬉しいです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 不器用な2人の想いがもどかしくて、切なくて、書いてるはずの私もソワソワしちゃいますが、2人の幸せを願いながら、続きを書こうと思います!文章が素敵だなんて、褒めてもらえて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ふじのん(プロフ) - あいさん、こちらの小説では恐らく初めましてです!雑誌を広げて文字を書いたニカちゃん。この時点で「アレしかなおよな?」と予想はしていましたが、とどめの「またなっ○○」がズッキューンときました!2人はもちろんですが、友達2人もどうなるのか気になります(^^) (2018年1月6日 22時) (レス) id: fe899e2f87 (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 植尾あいさん» ニカちゃんの声で心に響いています!自分の気持ちに気づいた主人公ちゃんと、不器用なニカちゃんがどうなるのか、とても楽しみです!文章もとっても素敵です! (2018年1月5日 23時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 二階堂くんの声で脳内再生されてますか?!よかったー。若い頃の二階堂くんをリアルタイムで知らないので、完全な妄想で仕上がっているので少々心配だったのですが、よかったー!のんびり更新ですが楽しみにお待ちくださいね! (2018年1月5日 18時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2017年7月18日 0時