お説教 ページ44
どうしよう……
どうしよう……
どうしよう……
グルグルと思考がループして、早くなる鼓動をどうにも止められない。
自転車を止めて、カゴに詰め込まれた荷物を取り出して肩にかけた。
公園の木の葉が緩い風に音を鳴らす。
ニカの元へ戻りながら、自分自身への言い訳を並べた。
軽い女だって思われたら嫌だけど、でも、他に思いつく言葉もないし、真夜中だし、酔っ払いから助けてもらったし、送ってもらったし。
どうしたらいいかわからないから……。
オレンジ色の街灯に、ぼんやりとした影を伸ばすニカに、速まる鼓動。深呼吸するみたいに息を吸ってから、ニカの前に立った。
「ニカ……、あ、あの、上がってく?」
ニカの顔なんて見られなくて、落ち着きない視線の端に、時々ニカを捉えながら、小声でそう言って、エントランスを指差した。
「広くは、ない……けど。片付いては、いる。」
何も言わないニカに、いたたまれなくなって、どうでもいい情報を口走る。
「何気に、デザイナーズマンション……だから。」
さらに、どうでもいい情報を重ねた時、目の前から大きなため息が聞こえた。
あぁ……、やっちゃった……。
後悔が押し寄せて、胸の奥から喉を絞めるような苦しさが襲う。
完全にニカを見られなくなって、俯いて、エントランスを指していた指を、ゆっくりと下ろすと、唇を噛んだ。
「……ごめん。何でもない。」
真夏の夜の小さな勇気は、空回り。
「何でもなくないだろ。もーーー。」
落とした視線の先。
ニカのつま先が、一歩、私の視界に近づいた。
「いや、ホント、忘れて?……恥ずかしい。」
笑って、誤魔化して、無かったことにしようとしたのに。
「A。彼氏でもない男、夜中に簡単に部屋に上げるなって。」
「……ごめんなさい。」
何で、私は、ニカに説教されてるんだろう?
「あと……。」
短く切った言葉の先を探す様に、私を見ないようにしたニカが、トーンを落とす。
「……何も言わないで帰るの、やめて。」
「え?」
「気になるから……。」
その言葉に、何も言えなくなるのは、私の脳が都合よく解釈したから。
「……心配に、なるだろ。」
続く言葉は、さらに、私の心を掴んで、その声が耳の奥に切ない音を残した。
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植尾あい(プロフ) - ふじのんさん» ウフフ 友達2人についても気になっちゃうあたり、マニアックですよ!(笑)でも、その期待を裏切らずに、友達も含めて、この先の展開を楽しみにしていて下さい!二階堂くんの不器用な優しさとか愛情表現、キュンとしてもらえたら嬉しいです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 不器用な2人の想いがもどかしくて、切なくて、書いてるはずの私もソワソワしちゃいますが、2人の幸せを願いながら、続きを書こうと思います!文章が素敵だなんて、褒めてもらえて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ふじのん(プロフ) - あいさん、こちらの小説では恐らく初めましてです!雑誌を広げて文字を書いたニカちゃん。この時点で「アレしかなおよな?」と予想はしていましたが、とどめの「またなっ○○」がズッキューンときました!2人はもちろんですが、友達2人もどうなるのか気になります(^^) (2018年1月6日 22時) (レス) id: fe899e2f87 (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 植尾あいさん» ニカちゃんの声で心に響いています!自分の気持ちに気づいた主人公ちゃんと、不器用なニカちゃんがどうなるのか、とても楽しみです!文章もとっても素敵です! (2018年1月5日 23時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 二階堂くんの声で脳内再生されてますか?!よかったー。若い頃の二階堂くんをリアルタイムで知らないので、完全な妄想で仕上がっているので少々心配だったのですが、よかったー!のんびり更新ですが楽しみにお待ちくださいね! (2018年1月5日 18時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2017年7月18日 0時