この嘘の行方

この想いの行く先は ページ41

「……行くぞ。」


抱きとめていてくれた手が、スルリと抜けていく。
短い言葉は、照れてる証拠。

逸らされた目が自転車と共に転がるカレを睨んで、それから、私の自転車を引っ張り出した。


「お、お、憶えてろよっ！！！」


まるで使い古されたドラマの台詞みたいに、地べたからカレが叫んだ。

自転車を引きながら数歩前を歩くニカが振り返りながら、もう一度、カレに言った。


「ヤダねっ！」


どこまでもクソガキ。

思わず小さく笑うと「笑うなよ」って、言って、ニカも笑った。





線路を鳴らして通り過ぎる電車の音。
街灯の薄明かりに伸びた、二人の影。


その距離は、近すぎず、遠すぎず。


前を歩くニカの背中に、ほんの少しだけ手を伸ばせば、私たちの影は、腕を組んで歩く二人になった。





好きになったら……ダメかな。





現実が私を引き止める。

無意識で足が止まれば、そんな私に気がつかないニカは、簡単に遠ざかる。



離れていく影。

もう、手を伸ばしても、二人の影は、繋がらない。




「…………、なんで」




思わずこぼれた言葉は、後悔。


アスファルトに張り付いた両足は、もう、一歩も進めず。
この想いの行く先に、わずかな光すら見つけられなかった。


苦しくなる胸に、こみ上げる想い。


自転車のタイヤが立てる音が止まって、顔を上げれば、少し先の街灯の下で、ニカが立ち止まっていた。



「……なんだよ。」



優しくない言葉。



「歩けない。」



可愛くないワガママ。



片足に体重をかけるように立つ細いシルエットが、深々とため息をついて、それから、自転車に跨った。

私の身長に合わされたサドルは、ニカには低くて、長い足を不自由そうにペダルに乗せて、振り向いた。



「仕方ねぇなぁ。」



そう言ったニカの声は、優しかった。

伝わる鼓動→←ドーーーーーン！

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