知らない時間 ページ34
ニカが触れる場所に、心臓が移動したみたいに、手首がドキ ドキしてる。
いつもみたいに、絡んでくれたらいいのに、ニカの視線は、真剣で真っ直ぐで、逸らしちゃいけない気がして、私も真っ直ぐに見つめ返した。
「……何?」
何も言わないニカに、もう一度声をかける。
「ん……。」
呼吸に音が乗った様な、声と一緒に多めに吐き出される息。
ニカが発する音は、誰にも真似出来ない。
その音に気を取られ、躊躇いがちに引かれた手首に、躓くように一歩ニカの元へ引き寄せられた。
フワリと香るニカの匂い。
Tシャツ越しにわかる四角い肩と、広い肩幅。
意識しなくても、それは、ちゃんと男の人で、ビールが飲めなくても、ちゃんと大人に見えた。
仕切り壁に寄せられて、きっと、今、私たちは、誰からも見えない。
誰からも……
拓海も、佐知も、知らない時間。
この先の展開を期待したら、いけないよね。
引き止める想い。
でも、この鼓動は、勘違いのシグナル。
「あのさ……。」
ニカらしくない、なんて、言えるほどの時間を過ごしたわけじゃないけど、いつものクソガキとは、全く違うトーンで言いにくそうに切り出す。
「……聞いた?」
そう言って、目を逸らし、俯いた。
逸らしたニカの視線の先には、まだ、握られたままの私の手。
同じように視線を落として、私の手首を握るニカの左手を見ると、人差し指に華奢なリングが柔らかな光を放っていた。
『何のこと?』なんて、聞き返さなくても、それが何を指すかなんてわかりきったこと。
「うん……。」
知らないふりなんてできない、現実。
「……そっか。」
知られたくなかった?
知らないふりをして欲しかった?
巻き戻せない時間に、後悔なんてしたくない。
「ニカ……、アイドルなんだってね。」
どうにもならない事実なら、知らないふりなんて意味がない。
隠しても、
嘘をついても、
その事実は、変わらないんだから……。
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植尾あい(プロフ) - ふじのんさん» ウフフ 友達2人についても気になっちゃうあたり、マニアックですよ!(笑)でも、その期待を裏切らずに、友達も含めて、この先の展開を楽しみにしていて下さい!二階堂くんの不器用な優しさとか愛情表現、キュンとしてもらえたら嬉しいです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 不器用な2人の想いがもどかしくて、切なくて、書いてるはずの私もソワソワしちゃいますが、2人の幸せを願いながら、続きを書こうと思います!文章が素敵だなんて、褒めてもらえて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ふじのん(プロフ) - あいさん、こちらの小説では恐らく初めましてです!雑誌を広げて文字を書いたニカちゃん。この時点で「アレしかなおよな?」と予想はしていましたが、とどめの「またなっ○○」がズッキューンときました!2人はもちろんですが、友達2人もどうなるのか気になります(^^) (2018年1月6日 22時) (レス) id: fe899e2f87 (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 植尾あいさん» ニカちゃんの声で心に響いています!自分の気持ちに気づいた主人公ちゃんと、不器用なニカちゃんがどうなるのか、とても楽しみです!文章もとっても素敵です! (2018年1月5日 23時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 二階堂くんの声で脳内再生されてますか?!よかったー。若い頃の二階堂くんをリアルタイムで知らないので、完全な妄想で仕上がっているので少々心配だったのですが、よかったー!のんびり更新ですが楽しみにお待ちくださいね! (2018年1月5日 18時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2017年7月18日 0時