呼び止める声 ページ4
趣きがあるって言えば聞こえはいいけど、簡単に言えば構内一ボロい3号館の渡り廊下にあるベンチに座って、手帳を開く。
就職活動を意識して買った使い勝手のいい革の手帳は、もう、すでにいい感じに使い込まれて、角が丸く馴染んできた。
パラパラと捲る月間予定には、面接の文字はまばら。
「…………ハァ。」
ため息をついて中庭に目を向ければ、チアリーダーの練習が終わったところだった。
賑やかに解散していくその姿は、大学生活を満喫している笑顔で溢れている。
「……いいなぁ。」
去年までの自分が重なる。
漠然としか意識できなかった就職が、こんなにも自分の人生を阻むとは思っていなかった。
サークルの先輩たちも、大変とはいいながらもどこかしらの企業に内定をもらっていたし、二つ三つの内定から選んで就職していった先輩だっている。
自分だって、そうやって、何となく就職していけるものだと思ってた。
思ってたのに……
……の、に……
「もーーーーー!なんで!私だけ!」
思わず叫んで立ち上がった。
手帳も、求人票のファイルも、全部力任せにリュックに突っ込んで、駆け出した。
傾いた夕日が影を伸ばし、整然と並ぶ校舎の窓ガラスをオレンジ色に染めた。
校門を駆け抜けて、駅までの道をまっしぐらに進む私を、聞きなれた声が呼び止めた。
「あれ?!A!」
思わず足を止め、乱れた呼吸のままで振り向くと、コンビニの前で、アイスバーを咥えた佐知が片手をあげて立っていた。
「フフッ 汗だく。」
笑いながら近づいてきた佐知は、何も言わずに、手に持っていたソーダ味のアイスバーを私の口に突っ込んだ。
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植尾あい(プロフ) - ふじのんさん» ウフフ 友達2人についても気になっちゃうあたり、マニアックですよ!(笑)でも、その期待を裏切らずに、友達も含めて、この先の展開を楽しみにしていて下さい!二階堂くんの不器用な優しさとか愛情表現、キュンとしてもらえたら嬉しいです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 不器用な2人の想いがもどかしくて、切なくて、書いてるはずの私もソワソワしちゃいますが、2人の幸せを願いながら、続きを書こうと思います!文章が素敵だなんて、褒めてもらえて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ふじのん(プロフ) - あいさん、こちらの小説では恐らく初めましてです!雑誌を広げて文字を書いたニカちゃん。この時点で「アレしかなおよな?」と予想はしていましたが、とどめの「またなっ○○」がズッキューンときました!2人はもちろんですが、友達2人もどうなるのか気になります(^^) (2018年1月6日 22時) (レス) id: fe899e2f87 (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 植尾あいさん» ニカちゃんの声で心に響いています!自分の気持ちに気づいた主人公ちゃんと、不器用なニカちゃんがどうなるのか、とても楽しみです!文章もとっても素敵です! (2018年1月5日 23時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 二階堂くんの声で脳内再生されてますか?!よかったー。若い頃の二階堂くんをリアルタイムで知らないので、完全な妄想で仕上がっているので少々心配だったのですが、よかったー!のんびり更新ですが楽しみにお待ちくださいね! (2018年1月5日 18時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2017年7月18日 0時