笑える命令 ページ15
テーブルに並ぶ料理は、どれも間違いなく美味しくて、マスターの料理の腕に感心する。
「何これ!マジうまい!」
「だろ?」
皮をパリパリに焼いた鶏肉に、甘辛いソースを絡めた料理を頬張ったカレが大袈裟なまでに騒いで、自分で作ったわけでもないのに、拓海が自慢げに答える。
「……声大っきいから。」
若干呆れて二人を見ながら言うと、持っていたフォークを私に向けて、カレが言った。
「道端で悲鳴あげて大騒ぎしてた人に言われたくありませーん。」
「は?フォークを人に向けないでよ。」
なぜ、カレがつっかかってくるのかも、なぜ、それを見て、拓海と佐知が笑っているのかも、わからない。
「就職内定だよ?!悲鳴くらい無意識で上がるし!」
「本当に、よかったよねー。」
ビールでほんのり赤くなった頬の佐知が肩を寄せて笑う。
「就職活動なめてんの?なんとかなるとか思ってるなら、大間違いだから!」
自分がその渦中に入らないと、この厳しさは、絶対にわからない。
身をもって知った就職難をカレに忠告する様に、言い放つ。
「は?」
「2年後なんてね、あっという間だからね?それまでに、自分のために、できること全部やっといた方がいいから。これ、忠告だから。いや、むしろ、経験者からの命令!」
『命令』に力を入れて、上から指差して言うと、暫くの無言の後、キョトンとするカレと、肩を震わせて笑い出す拓海と佐知。
「え?何?今、笑うところじゃないんだけど。」
「いやいやいや……」
「だって……フフフ」
ますます笑いが加速していく。
「……オマエ、オレに、就職活動をしろと。ククク」
カレにも笑いは伝染して、居心地のいいはずのソファが、どうにも落ち着かなくなっていく。
……疎外感ハンパないんですけど。
「就職しないつもりなの?
って、ゆうか!私、『オマエ』じゃないから!」
1:3の完全アウェイな構図を脱却したくて、何気なく会話をすり替える。
初対面なのに、オマエ呼ばわりされるのは面白くない。
「あ、そうだった。」
そこで、今更ながら気がついたみたいに、拓海がカレの肩に手を置いて、私と佐知を交互に見た。
佐知が相変わらず、ほろ酔いな赤い頬でカレを見つめる。
なんだか、カレが、私たち3人の関係を壊していくような、変えていくような、そんな不安と期待が胸を過ぎった。
469人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
植尾あい(プロフ) - ふじのんさん» ウフフ 友達2人についても気になっちゃうあたり、マニアックですよ!(笑)でも、その期待を裏切らずに、友達も含めて、この先の展開を楽しみにしていて下さい!二階堂くんの不器用な優しさとか愛情表現、キュンとしてもらえたら嬉しいです。 (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 不器用な2人の想いがもどかしくて、切なくて、書いてるはずの私もソワソワしちゃいますが、2人の幸せを願いながら、続きを書こうと思います!文章が素敵だなんて、褒めてもらえて嬉しいです!ありがとうございます! (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ふじのん(プロフ) - あいさん、こちらの小説では恐らく初めましてです!雑誌を広げて文字を書いたニカちゃん。この時点で「アレしかなおよな?」と予想はしていましたが、とどめの「またなっ○○」がズッキューンときました!2人はもちろんですが、友達2人もどうなるのか気になります(^^) (2018年1月6日 22時) (レス) id: fe899e2f87 (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 植尾あいさん» ニカちゃんの声で心に響いています!自分の気持ちに気づいた主人公ちゃんと、不器用なニカちゃんがどうなるのか、とても楽しみです!文章もとっても素敵です! (2018年1月5日 23時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 二階堂くんの声で脳内再生されてますか?!よかったー。若い頃の二階堂くんをリアルタイムで知らないので、完全な妄想で仕上がっているので少々心配だったのですが、よかったー!のんびり更新ですが楽しみにお待ちくださいね! (2018年1月5日 18時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:植尾あい | 作成日時:2017年7月18日 0時