暗号 ページ47
「じゃーなっ！」
落書きを確認しようと、ボールペンが挟まれたページに指をかけると、目の前のニカがクルリと背を向けた。
「えっ？！ちょっ、え？！」
突然のことにあたふたしながら、引き止める言葉も見つけられず、踏み出した一歩が続かない。
「また、変な奴に絡まれる前に、帰れよ。」
遠ざかるニカの言葉は、優しい音を含んで届く。
街灯の下。
軽やかなステップを踏むように、照らされたシルエットは、しなやかなラインを描く。
それは、スポットライトに浮かぶキミ。
手を伸ばしても届かない。
遠く、儚く、煌めく恋。
「ニカっ！……ま
「またなっ。A。」
私の声に重なる声が、次を期待させる。
何の保証もないその言葉だけで、伸ばした指先がキミの手に届きそうな気がしてしまう。
真夜中の空気に溶けるように、
遠ざかるニカの背中に苦しくなるのは、
胸の奥に、キミがそっと置いていった、
恋の種。
口角を上げた生意気な唇が、「A」って呼ぶ声に、震える想いは、小さなその種を温め膨らませる。
「またねっ！！！」
Tシャツの裾を翻して、見えなくなるニカに、次の約束を返す。
纏わり付く湿度の高い空気と、早まる鼓動が体温を上げる。
「……ﾌﾌｯ わけがわからない。」
突然で唐突なニカの行動に、笑いがこみ上げる。
手にした雑誌を開くと、生意気そうな目でこっちを見る男の子たち。
「ひどっ！！！」
明るい茶髪の男の子の鼻に、妙にリアルな鼻毛が書かれていて、思わず声を上げた。
「……っ！」
一瞬、時間が止まった気がした。
挟まれていたボールペンが滑り落ちて、アスファルトに当たる音がする。
『センガ』くんの隣には、ニカ。
でも、それは、私の知らない二階堂高嗣の顔。
私を睨む二階堂高嗣の白いシャツに、少しの数字とアルファベット。
「字……、下手くそ。」
指先でなぞって、この瞬間を忘れない様にと、キュッと手を握った。
それは、ニカへと繋がる暗号で、
それは、恋の種が芽を出した瞬間だった。
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植尾あい(プロフ) - ふじのんさん» ｳﾌﾌ 友達2人についても気になっちゃうあたり、マニアックですよ！（笑）でも、その期待を裏切らずに、友達も含めて、この先の展開を楽しみにしていて下さい！二階堂くんの不器用な優しさとか愛情表現、キュンとしてもらえたら嬉しいです。 (2018年2月10日 22時) (
レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 不器用な2人の想いがもどかしくて、切なくて、書いてるはずの私もソワソワしちゃいますが、2人の幸せを願いながら、続きを書こうと思います！文章が素敵だなんて、褒めてもらえて嬉しいです！ありがとうございます！ (2018年2月10日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ふじのん(プロフ) - あいさん、こちらの小説では恐らく初めましてです！雑誌を広げて文字を書いたニカちゃん。この時点で「アレしかなおよな？」と予想はしていましたが、とどめの「またなっ○○」がズッキューンときました！2人はもちろんですが、友達2人もどうなるのか気になります(^^) (2018年1月6日 22時) (レス) id: fe899e2f87 (このIDを非表示/違反報告)
にかはるか(プロフ) - 植尾あいさん» ニカちゃんの声で心に響いています！自分の気持ちに気づいた主人公ちゃんと、不器用なニカちゃんがどうなるのか、とても楽しみです！文章もとっても素敵です！ (2018年1月5日 23時) (レス) id: 3dfef49e61 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - にかはるかさん» 二階堂くんの声で脳内再生されてますか？！よかったー。若い頃の二階堂くんをリアルタイムで知らないので、完全な妄想で仕上がっているので少々心配だったのですが、よかったー！のんびり更新ですが楽しみにお待ちくださいね！ (2018年1月5日 18時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：植尾あい
| 作成日時：2017年7月18日 0時
