仔犬の願い ページ34
オレの正体を知らないっていうキミに、それが本当なのか確かめることは困難で、無理に追求すれば、自分で自分の正体を明かすことになる。
捕まえた華奢な指先は、戸惑う様に、微かに震えていた。
知られてしまえば、きっと、もう、こんな風には、いられない。
キミの言葉を信じて、もう少し、『仔犬』でいさせて?
沈黙が、空気を重く満たしていく。
恋なんてしない。
恋なんていらないから……。
ただ、こんな風に、居心地のいい距離で、少し誰かを想いたかった。
自分に都合よく、ワガママな願い。
ゆっくりと沈んでいく空気を、どうやって変えようかと、気持ちを切り替えて瞬きすると、タイミングよくポケットの中でスマホが震えた。
何かいけない事をしていたのがバレた気分で、重ねたキミの手を離して、ポケットからスマホを取り出した。
もちろん、画面には『ミツ』。
「…… 友達?」
触れていた手は、キミの元へ帰って、もう、すぐには届かない場所に消えた。
「うん…。もしもし?」
繋がる先へと、意識を向けると、キミは、スッと引くように俯いて、口を噤んだ。
さり気ない気づかいと、俯いた前髪の向こうに見える長いまつ毛に、また、胸の奥がギュッとなった。
「ニカ?あーーー、多分近くまで来てると思う。今、変な犬の看板ある所。これ右折?」
スマホから聞こえるミツの現在地報告に、すぐそこまで来てることを知る。
「そうそう、そこの信号曲がるとコンビニあるから。そこで待ってて!」
「オッケ。」
手短に切られる会話。
ミツの向こうに聞こえた音の中から、彼女の気配は消えていて、ミツからも彼氏の雰囲気は、消えていた。
俯いていた顔を上げたキミと目が合って、状況を説明する。
「ミツ……あっ、友達ね。もう着くって。」
「よかったね。」
ふわりと笑うキミの頬は、薄く色づいて、その笑顔の中に、少しの寂しさを感じた。
「うん、ありがとう。部屋で待たせてもらって。
焼おにぎりもすんげー旨かった!」
キミの優しさにお礼を言って、スマホをポケットに入れると、その奥で部屋の鍵とぶつかった。
850人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「Kis-My-Ft2」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時