おにぎり ページ30
冷凍されたおにぎりを電子レンジに入れて、手際よく調味料を混ぜ始めるキミの手を眺めながら、自分の為だけに、作ってくれるご飯は、何時ぶりかな……なんて、考えた。
思い出すのは、前の部屋のキッチンに立つカノジョの姿……。
忘れたと思った記憶は、小さなきっかけに引っ張られ、鮮明に蘇る。
お世辞にも上手とは言えなかったけど、一生懸命だったのは、知ってた。
カウンター越しに、キミが料理を進めるのを見て、無意識で比べる。
……嫌な奴だな。
「……女の子って感じだね。」
ピンク色のネイルと、不釣り合いな味噌の保存容器。
そのアンバランスな組み合わせに、何故かそう感じて口に出すと、菜箸を握る指先が一瞬止まって、目が合ったキミの頬がほのかに染まった気がした。
ピーピーピー
おにぎりの解凍を知らせる電子レンジの音。
キミが、慌てた様に背を向けて、電子レンジの扉を開けると、ふわりと香る、温かで懐かしい匂い。
「ご飯の匂い〜。」
空腹が加速していく気がして、喉の奥が鳴った。
一人暮らしをはじめて数年。
炊飯器を使ったのは、何回だろう……、いや、料理ができないわけじゃない。
オレ、やれば出来る子だし。
「…… あっつっ!」
自分で自分に言い訳してると、若干可愛げのない悲鳴が聞こえてハッとする。
電子レンジの前で、指先を握るようにしたキミの背中。
「どうしたの!?大丈夫?」
レンジの中には、湯気を上げ熱々になったおにぎりが転がっていた。
火傷した?
触れたこともないのに、キミの白くて柔らかそうな指先が心配になって身を乗り出す。
「大丈夫、大丈夫。ヘヘッ
よくやっちゃうんだよね〜。」
恥ずかしそうに、少し強がるように、そして、誤魔化すようにそう言って、慎重におにぎりを取り出すキミに、やっぱり、また、心配になって。
ほっとけない……
そう思った。
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植尾あい(プロフ) - ノンさん» はじめまして。キミ声、何度も読んでもらえたなんて嬉しいです。ニカ中毒だなんて!光栄です!私の言葉、気に入ってもらえましたか?よかった!これからも、のんびりですがキミ恋もよろしくお願いします(*^^*) (2017年4月25日 22時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ノン - 初めてコメントさせてもらいます。キミ声にハマって、何度も読ませてもらって、何度も涙して、ニカ中毒になりました。(笑)ニカsideも楽しみに読ませてもらっています。楽しみがまた増えました。ありがとうございます。あいさんの言葉の表現、大好きです。 (2017年4月23日 23時) (レス) id: d6afd85c10 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» 実は、見つけてたんです(ノ∀`*)ンフフ♪ なんか、こういううっかりしてそうじゃない?(笑)まだまだ、距離を置いて慎重なニカが、この距離をどうしていくのか、楽しみにしていて下さい!バンザイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - きななさん» バンザーイ!二階堂くんにバンザーイ! (2017年3月29日 17時) (レス) id: 2cc18cecc9 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - カギ見つけてたんだ!探したはずのポッケに入ってたとか本当にやってそうだなー(笑)ってニヤニヤしちゃった(°▽°)いつから「ニカ」が「高嗣」として接して行くのかとか、楽しみで仕方ないっ!ばんざーーーーい!! (2017年3月27日 10時) (レス) id: 6cd6e0891b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2016年12月25日 22時