嫉妬《Ki→S》5 ページ22
健永に電話すると、丁度仕事が終わったところで、偶然にも地下鉄で二駅という場所にいた。
驚かせたくてA達のことは伝えずに、店の場所を説明して、一方的に電話を切った。
オレが話している間、ずっと笑いをこらえている二人が、電話を切った瞬間に笑いだして「意地悪な先輩!」って、指さした。
甘いお酒に、ほんのりと頬を染めたAの目がとろんとしてて、妙に色っぽかった。
短大卒の二人のあるある話を聞きながら、時計を確認すると、そろそろ健永が到着する頃だった。
「こちらになります……」
店員の声がして、顔を上げる。
どんな顔する?
何て言う?
相変わらずの派手な髪。
オレには理解できないオシャレな服。
どこで買ったのか見当もつかない靴。
「おつかれー!ミツ…………。」
オレたちの個室の仕切りから姿を現した健永は、そこまで言って凍りついたように動きを止めた。
そして、聴き逃しそうな声で言ったんだ。
「…………にゃん、ちゃん。」
嘘だろ?
あの日から、聞かなくなっていた、その呼び方。
「……え?」
聞き間違えだと思いたかった。
お酒のせいだって思いたかった。
その、視線は、間違いなく、同じように凍りついたように健永を見ているAを捉えていた。
「お、お、おつかれー!なんだよ!ミツ!どういうこと?!えっ?何?彼女?」
オレが口を開くより先に、健永が勢いよく喋りだして、ドカッと隣に座った。
「あ、……あぁ。」
「なんだよーーー!驚いたじゃん!どうもー、千賀健永でーす!」
オレに話す隙を与えない健永が調子よく自己紹介をして、メニューを手に取った。
「健永……。」
「ミツ、何飲んでんの?オレも同じのするわ。すみませーーーん!」
通路に顔を出して、通りがかった店員を呼び止めると、いつもなら絶対に頼まないような強い酒を注文した。
いつも以上に明るく、いつも以上によく喋る、そして、いつも以上に飲む健永に、もう、何も言えなかった。
Aの友達は、楽しそうに健永の話に耳を傾けて、時々、Aに同意を求めるように視線を向けた。
その度、Aは、情けなく笑った。
でも、一度も、健永と目を合わすことなく、会話することはなかった。
どれだけ時間が経っても、一目で、一瞬で、あの時の感情が蘇る。互いの幸せを願って別れを選んだ二人。
オレの知らない二人の過去を……、妬んだ。
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植尾あい(プロフ) - nanacoさん» んふんふ(//∇//)楽しんでいただけたようでよかったです!こういう雰囲気は、藤ヶ谷くんが似合いますよねぇ。また、イチャイチャするだけのお話を書きたいなーと、思いました! (2020年7月31日 17時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
nanaco(プロフ) - 甘々藤ヶ谷さん!(//∇//) ごちそうさまでした、最高すぎます…(TT) ありがとうございます(TT) (2020年7月30日 23時) (レス) id: a7b3edb10a (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ナナさん» ナナさん!!!お久しぶりです!お元気でしょうか? そうなんです!星に願いをに続いて、運命なんです!伝わってよかった(^^) 切ないけど幸せな気持ちになってもらえたら嬉しいです。 (2020年5月30日 13時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - あいさんお久しぶりです!!これは運命…と気づいた瞬間に涙が…。心がポッと暖かくなりました!! (2020年5月30日 1時) (レス) id: 3bad9f733c (このIDを非表示/違反報告)
植尾あい(プロフ) - ソフィアさん» 年下俺様生意気な渉に迫られて、メロメロですよね。年上イメージがある横尾くんですが、こんな関係も時にはありかな?と。楽しんでいただけて良かったです! (2020年5月8日 22時) (レス) id: 3c990321a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:植尾あい | 作成日時:2018年9月12日 22時